アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが運営する「IYフレッシュ」がサービス終了

アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していた、ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了しました。IYフレッシュが始まったのは2017年11月なので、約二年間でサービスが終了したことになります。

IYフレッシュはアスクルが持つECのノウハウ、セブン&アイ・ホールディングスが持つ食品のノウハウを活かし、事業の拡大が期待されていました。IYフレッシュのサービスは約二年間で終了したため、二社が持つノウハウを活用しても、ネットスーパー事業は難しいということが再認識されました。

IYフレッシュは終了しましたが、小売業・EC企業はネットスーパーへの投資を止めることはできません。いつになるかは分かりませんが、将来的にお客さんがネットスーパーで食品を買うようになるのはほぼ確実だと考えられます。競合企業に遅れを取らないため、小売業・EC企業はネットスーパーへの投資を続けて行くことになります。

ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了

アスクルが運営するECサイト「ロハコ」で提供されていた、ネットスーパー「IYフレッシュ」のサービスが終了しました。サービスの終了日時は、注文は11月28日23時まで、配送は11月30日22時まででした。

IYフレッシュは2017年11月より、東京都新宿区、文京区の2区でテスト展開をしていたネットスーパー事業です。IYフレッシュはEC企業のアスクルと、小売業のセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していました。

IYフレッシュは仕事を持つ忙しい女性をターゲットに、時短の付加価値を提供するコンセプトでした。カットした野菜、煮るだけ、焼くだけの魚や肉、メニューに必要な下ごしらえ済みの食材をセットにしたミールキットなどを販売していました。

IYフレッシュの注文データは「イトーヨーカドーネットスーパー西日暮里店」に送られ、商品の製造・仕分け・梱包を行った後、ロハコのデポに集約され、ロハコの商品と一緒にお客さんに配送する仕組みでした。

アスクルが運営するロハコは、仕事・子育てに忙しい女性が食品、日用品を購入するECサイトです。ロハコの既存顧客に対して、セブンプレミアムなど、セブン&アイ・ホールディングスが持つ信頼性の高い食品を販売することで、ネットスーパー事業を拡大する狙いがありました。

IYフレッシュはセブン&アイ・ホールディングスが持つ食品のノウハウ、アスクルが持つECのノウハウを活かし、事業の成長が見込まれていました。IYフレッシュは東京都新宿区、文京区の2区でテスト展開されていましたが、サービス提供地域を拡大する計画もありました。

今回、IYフレッシュのサービスは終了したため、事業は当初の計画ほどうまく行かなかったと考えられます。

ロハコではIYフレッシュの代替サービスとして、イトーヨーカドーのネットスーパー「アイワイネット」、厳選した野菜、フルーツをお届けする「Farmer’s Maket 」、ロハコ限定パン「LOHACO BREAD」を案内しています。

ネットスーパー「IYフレッシュ」が終了する理由

アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していた、ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了しました。IYフレッシュが終了する理由については、具体的には発表されていません。

IYフレッシュが終了する理由は、当初の計画よりも売上が少なかった、または、当初の計画通りテストが完了した、二つのケースが考えられます。

アスクルが運営するECサイト「ロハコ」は、仕事・子育てに忙しい女性に食品、日用品を販売しており、売上は急拡大を続けています。ロハコの2019年5月期の売上高は513億円で、前期の417億円から23.1%増加しています。

ロハコは購買力のある顧客基盤を持っており、IYフレッシュの売上は大きく伸びるという期待はあったのではないかと思います。ただ、サービスが終了したため、期待ほどの売上を獲得できなかったと推測されます。

IYフレッシュは売上に関係なく、テストが完了したため、当初の計画通り終了したと見ることもできます。

IYフレッシュのサービス終了を説明するWEBページには、「テスト展開していた」という文言があります。最初から二年間テストを行う計画であったのであれば、サービスの終了も計画通りです。

ネットスーパーは物流が課題ですが、IYフレッシュの物流は既存の設備を使ったものでした。セブン&アイ・ホールディングスはネットスーパー対応の物流施設「イトーヨーカドーネットスーパー西日暮里店」を持ち、アスクルは自社の物流網を持っています。

IYフレッシュには大きな設備投資がなく、十分な売上を確保できていれば、事業を継続したと考えられます。IYフレッシュのサービス終了は売上が少ないことが理由で、不本意だったのではないでしょうか。

ネットスーパー「IYフレッシュ」の終了が業界に与える影響

アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していた、ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了しました。小売・ECの有力企業が共同で運営するネットスーパーが終了したことは、業界にも大きな影響を与えます。

IYフレッシュのサービス終了により、多くのお客さんは依然として、ネットスーパーで食品を買わないことが分かりました。

ロハコの既存顧客は仕事・子育てに忙しい女性で、ネットスーパーで積極的に食品を購入するイメージがあります。しかし、IYフレッシュはサービスを終了したため、イメージのように積極的に食品を買うわけではありません。

お客さんがネットスーパーで食品を買わない理由の一つとして、食品は自分の目で見て、触ってから買いたいというものがあります。生鮮食品は一つ一つ品質が異なるので、自分が納得できるものを買いたいと考える人が多いです。

セブン&アイ・ホールディングスはセブン-イレブン、イトーヨーカドーを展開しており、食品への信頼性は高いです。しかし、IYフレッシュはサービスを終了したため、食品の信頼性は大きな強みにはならなかったと言えます。

これはセブン&アイ・ホールディングスの食品の信頼性が不十分だったのではなく、お客さんは食品の品質以前に、ネットスーパーで食品を買うこと自体に興味がないと考えられます。

IYフレッシュのサービスが終了したことで、ネットスーパーの難しさが再認識されました。小売・ECの有力企業である、アスクルとセブン&アイ・ホールディングスの共同運営でも十分な売上が得られないのであれば、ネットスーパーで成功する可能性はほとんどないと言えるかもしれません。

ネットスーパー「IYフレッシュ」で買い物をしなかった理由

アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していた、ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了しました。IYフレッシュで買い物をする人は、当初の予想よりも少なかったということになります。

お客さんがIYフレッシュで買い物をしなかった理由は、リアルのスーパーマーケットと比較して、IYフレッシュに価値を見いだせなかったからではないかと考えられます。品揃え、価格、利便性、品質など、総合的な買い物体験において、IYフレッシュはスーパーマーケットと競うことが難しかったと評価できます。

これはIYフレッシュだけの課題ではなく、ネットスーパーそのものが、スーパーマーケットに負けている部分が多いです。

ネットスーパーはスマートフォンから買い物をして、自宅に届く利便性を訴求しています。文言だけを見ると便利に見えますが、実際にはそれほど便利ではありません。

スマートフォンでたくさんの商品を見るのには時間が掛かり、毎週毎週、自宅で商品を受け取ることはストレスです。休日や仕事帰りに、近所のスーパーマーケットで買い物をする習慣がある人は、ネットスーパーを利用する動機がありません。

IYフレッシュでは米、水など、持ち帰りが大変な定番商品だけが売れ、客単価が思ったほど伸びなかったのではないでしょうか。

スーパーマーケットと比較すると、ネットスーパーは価格が高いです。ネットスーパーの利便性に魅力を感じる人は、価格が高くても買い物をします。ネットスーパーの利便性に魅力を感じない人は、価格が高い商品を買う理由がありません。

IYフレッシュは品揃えの豊富さを訴求していましたが、お客さんはネットスーパーに品揃えを求めていないと考えられます。豊富な品揃えは、商品の閲覧に時間が掛かることを意味していて、利便性を損なう要因にもなります。お客さんは豊富な品揃えよりも、お気に入りの商品が常に安く買えることを望んでいます。

IYフレッシュのサービスが終了したことで、改めてネットスーパーの難しさを認識することになりました。ネットスーパーには、品揃え、価格、利便性、品質など、総合的な買い物体験を改善する余地があります。

小売業・EC企業のネットスーパーへの投資は今後も続く

アスクルとセブン&アイ・ホールディングスが共同で運営していた、ネットスーパー「IYフレッシュ」は11月末でサービスを終了しました。IYフレッシュの終了はネットスーパーの難しさを再認識させるものですが、小売業・EC企業がネットスーパーへの投資をやめることはないと考えられます。

小売業・EC企業がネットスーパーへの投資を続ける理由は、将来的に、多くの人がネットスーパーで食品を買うときが来ると予想されるからです。

家電、衣料品はECで買わないと言われていましたが、EC化率は年々上昇していて、家電、衣料品をECで買うことは普通になりつつあります。他のカテゴリと比較すると、食品のEC化率は低いですが、家電、衣料品と同じように、いつかはECで買うようになります。

お客さんがネットスーパーで食品を買わない理由は、品揃え、価格、利便性、品質など、総合的な買い物体験に不満があるからです。買い物に時間が掛からない、価格は安い、受け取り方法も簡単など、総合的な買い物体験が改善されれば、多くの人がネットスーパーで食品を買うようになります。

ネットスーパーが成功するためには、特に価格が重要になると思います。

ネットスーパーでは、商品の梱包、配送といった物流業務において、AI、ロボットの活用が期待されています。AI、ロボットでネットスーパーの生産性が高まれば、スーパーマーケットよりも価格が安くなる可能性は十分にあります。ネットスーパーの価格がスーパーマーケットよりも安くなれば、ネットスーパーで買い物をする人が一気に増えます。

IYフレッシュは終了しましたが、アスクル、セブン&アイ・ホールディングスがネットスーパーを止めるということにはならないと思います。セブン&アイ・ホールディングスには、イトーヨーカドーのネットスーパー「アイワイネット」があります。アスクルは野菜、フルーツ、パンなどを販売していて、今後も食品の強化を続けるはずです。

お客さんがいつネットスーパーで食品を買うようになるのか、時期を予測することは難しいです。ただ、お客さんがネットスーパーで食品を買うようになるのはほぼ確実なので、小売業・EC企業は投資を続けていかなければなりません。