12月16日、ロイヤルホールディングスは「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」を12月24日にオープンすることを発表しました。「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」は、2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」をさらに改良した店舗です。
「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」には、生産性向上と働き方改革のための施策が導入されています。生産性向上と働き方改革を実現するにあたって、期待が特に大きいのが完全キャッシュレス店舗です。
完全キャッシュレス店舗は現金が使えないため、客数・売上を伸ばすことが難しく、多店舗展開のハードルは高いです。一方、完全キャッシュレス店舗の生産性は高く、多店舗展開できるようになれば、企業全体の生産性の向上にも繋がります。
「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」の概要
12月16日、ロイヤルホールディングスは「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」を12月24日にオープンすることを発表しました。「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」は、2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」のノウハウを取り入れ、進化した店舗です。
2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」は、生産性向上と働き方改革の両立を目指した研究開発店舗です。
「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」では、ITによる店長業務の効率化、キッチンオペレーション改革による調理工程短縮と料理の質の両立、小規模・低投資型店舗の展開に取り組み、完全キャッシュレスやセルフオーダーのオペレーション、火と油のないキッチンでの調理などの研究が行われています。
「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」は現金が使えない完全キャッシュレス店舗で、オープン時はインターネットでも話題になりました。
今回、新たにオープンする「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」では、新しい施策が導入されています。
新しく導入された施策には、店内での「楽天Edy」のチャージ、「楽天ペイ」による顔認証決済の実証実験(一般客は利用できない)、予約・顧客台帳サービスとPOSの連携、レストラン品質のフローズンミール「ロイヤルデリ」計25品の本格販売などがあります。
「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」は、2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」での研究結果を踏まえ、生産性向上と働き方改革をさらに推進する内容になっています。
なぜ完全キャッシュレス店舗を出店するのか
「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」は2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」と同様に、完全キャッシュレス店舗です。
ロイヤルホールディングスが完全キャッシュレス店舗を出店する理由は、完全キャッシュレスが生産性向上と働き方改革に大きく貢献するからだと考えられます。
日本では人口減少による人手不足の状況が続いています。ロイヤルホールディングスを含め、飲食チェーンでは、少数の正社員と多数のアルバイト・パートで店舗を運営しています。飲食チェーンが人手不足に対応するためには、正社員の労働環境を改善するとともに、少数のアルバイト・パートで運営できる店舗が必要です。
完全キャッシュレス店舗では、現金を扱う業務を大きく削減することができ、生産性向上と働き方改革を実現できます。
閉店後に現金を扱う業務がなくなるため、店長は早く家に帰れるようになります。また、現金を扱う業務の削減で生まれた時間を、接客・サービスなどのコア業務に使うことで、店舗の売上アップ、従業員のやりがいアップにも繋がります。
現金を扱う業務は店舗運営には不可欠ではあるものの、単純作業の繰り返しで、従業員にとって楽しいものではありません。完全キャッシュレス店舗には、単に現金を扱う業務を減らすだけでなく、楽しくない業務を減らすという効果もあります。
現在、小売チェーン、飲食チェーンでは、キャッシュレス決済の導入が加速しています。ロイヤルホールディングスが研究開発している完全キャッシュレス店舗は、キャッシュレス決済が目指す理想の店舗です。
完全キャッシュレス店舗を多店舗展開できるか
ロイヤルホールディングスは2017年11月に最初の完全キャッシュレス店舗を出店し、今回、二店目を出店します。完全キャッシュレス店舗の多店舗展開については、現金だけを使用するお客さんが依然として多く、実現はまだ先になるのではないかと思います。
完全キャッシュレス店舗は生産性向上と働き方改革に効果がある一方で、現金が利用できないという欠点があります。
完全キャッシュレス店舗は現金が使えないため、現金が使える従来の店舗よりも客数が減少します。客数の減少は売上の減少になるため、利益の確保が難しくなります。
ロイヤルホールディングスが完全キャッシュレス店舗を多店舗展開していないことからも、客数・売上が少なく、利益の確保が難しいと推測できます。
キャッシュレス店舗の多店舗展開は、ロイヤルホールディングスの努力ではなく、キャッシュレス決済の普及と関係しています。ロイヤルホールディングスとしては、キャッシュレス決済が普及するのを待つしかありません。
現在、スマホ決済が乱立しており、利用者を増やすために、積極的なポイント還元キャンペーンが実施されています。スマホ決済に関するアンケート調査を見ると、スマホ決済の利用者は急増しており、キャッシュレスは広まりつつあります。
完全キャッシュレス店舗がいつ多店舗展開されるようになるのかは分かりません。一般的に飲食店の商圏は狭く、キャッシュレス決済に積極的なお客さんが多い商圏を選べば、早い時期に多店舗展開を実現できる可能性もあります。
なぜ完全キャッシュレス店舗で冷凍食品を販売するのか
新規オープンする「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」では、「ロイヤルデリ」という冷凍食品の販売がスタートします。「ロイヤルデリ」は完全キャッシュレス店舗で販売がスタートしますが、完全キャッシュレス決済限定のものではないようです。
ロイヤルホールディングスが冷凍食品を販売する理由は、高齢化や単身世帯の増加、女性の社会進出などにより、冷凍食品市場が拡大しているためです。
冷凍食品はスーパーマーケットだけではなく、コンビニ、ドラッグストア、ディスカウントストアでも販売しています。すべての企業に冷凍食品を販売するチャンスがあり、ロイヤルホールディングスにもあります。
ロイヤルホールディングスはファミリーレストラン「ロイヤルホスト」の運営で、高品質・高価格のブランドイメージを構築しています。ロイヤルホストの高品質・高価格のブランドイメージは、冷凍食品の販売でも活かされます。
冷凍食品は完全キャッシュレス店舗だけのものではありませんが、完全キャッシュレス店舗の客単価を押し上げる効果には期待が掛かります。
完全キャッシュレス店舗は現金が使えないため、従来の店舗よりも客数・売上が減少します。完全キャッシュレス店舗が利益を確保するためには、客単価を高める必要があり、冷凍食品の販売は客単価アップに繋がります。
完全キャッシュレス店舗の利用者は、利便性・効率性を重視するお客さんです。冷凍食品もお客さんに利便性・効率性を提供するもので、完全キャッシュレス店舗との相性は良いです。完全キャッシュレス店舗で食事をしたお客さんが、帰りに冷凍食品も買ってくれるというのは、起こりやすいシナリオです。
完全キャッシュレス店舗には高い生産性を期待
ロイヤルホールディングスは2017年11月にオープンした「GATHERING TABLE PANTRY 馬喰町」に続き、「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」をオープンします。「GATHERING TABLE PANTRY 二子玉川」には、生産性向上と働き方改革のための施策が導入されていますが、最も重要なのは完全キャッシュレス店舗です。
完全キャッシュレス店舗が重要な理由は、省人化の効果が大きいからです。
完全キャッシュレス店舗では、現金を扱う業務が大きく削減されるため、より少ない人員での店舗運営が可能になります。オーダーと決済をテーブルで行う仕組みがあれば、店員の仕事は食器を運ぶことだけになります。
ロイヤルホールディングスは冷凍食品の販売を始めますが、冷凍食品もキャッシュレス決済で販売できると生産性が高いです。廃棄ロスの少ない冷凍食品がキャッシュレス決済で次々に売れていけば、店舗の生産性向上に大きく貢献します。
日本では人口の減少が続くことから、飲食チェーンが新規出店で店舗数を増やして、客数を増やすというのは難しいです。
飲食チェーンが利益を増やすためには、店舗の生産性を向上させるのが現実的な方法です。完全キャッシュレスは店舗の生産性向上の軸になるもので、決済だけではなく、オーダー、物販、予約、テイクアウトなどとも連携します。
現在のところ、完全キャッシュレス店舗を多店舗展開することは困難ですが、飲食チェーンの生産性を大きく高める可能性を持っています。