2月26日、イオンリテールはレジに並ばない買い物スタイル「どこでもレジ レジゴー」を約20店舗に導入すると発表しました。
「レジゴー」はお客さんが専用のスマホを使い、商品をスキャンしながら買い物をすることで、レジの待ち時間を短縮する仕組みです。お客さんはレジの待ち時間短縮で買い物が快適になり、イオンリテールは店舗の生産性向上が期待できます。
「レジゴー」では、お客さんが自分で商品をスキャンする負担があるため、多くの人に利用してもらうことは難しそうです。ただ、利用者が少数であっても、店舗の生産性向上の効果は一定程度あります。
レジに並ばない買い物スタイル「レジゴー」
2月26日、イオンリテールはレジに並ばない買い物スタイル「どこでもレジ レジゴー」(以下、「レジゴー」)の導入を拡大すると発表しました。2020年度中に、東京・千葉・神奈川の「イオン」、「イオンスタイル」を中心に約20店舗に導入する予定です。
イオンリテールが導入する「レジゴー」とは、専用スマホを利用する、新しいタイプのレジです。
お客さんはイオンリテールが用意する専用スマホを使い、商品をスキャンしながら買い物をします。
商品をスキャンしながら買い物をするので、スマホには購入した商品が記録されます。何を購入したのかを確認できるため、買い忘れがなくなります。
スマホにスキャンした買い物データを専用レジに送信することにより、レジでの商品スキャンがなくなり、レジの待ち時間は大幅に短縮されます。
「レジゴー」の利用手順は次のようになります。
- 店舗の入口付近にある専用スマホを手に取る。カートを利用する場合は、スマホホルダーにセットする。
- スマホのカメラで購入する商品のバーコードをスキャンする。野菜など、商品にバーコードが付いていない商品は、POPのバーコードをスキャンする。
- 商品を複数購入する場合、キャンセルする場合はスマホの画面を操作して行う。
- 会計は専用レジに表示されるバーコードをスキャンすると、買い物データがレジに送信される。
- 現金、電子マネー「WAON」、クレジットカードで支払いを行う。
今後、「レジゴー」にレコメンド機能を追加することで、お客さんにお買い得商品の提案、メニューの紹介など、買い物体験の改良が予定されています。
なぜイオンリテールは「レジゴー」を導入するのか
イオンリテールは「レジゴー」を約20店舗に導入する計画です。
イオンリテールが「レジゴー」を導入する目的は、お客さんにデジタル化された、優れた買い物体験を提供するためです。
レジの待ち時間短縮は、イオンリテールが「レジゴー」を導入する主たる目的です。
小売業の店舗で買い物をするお客さんが、レジの待ち時間に大きな不満を持っているというわけではありません。ただ、スーパーマーケットはレジが混雑しやすい業種で、イオンリテールにとっては改善したい問題です。
お客さんの立場では、レジの混雑が解消されるのであれば、それに越したことはありません。「レジゴー」の導入はレジの混雑の解消に繋がるため、お客さんに喜ばれます。
「レジゴー」は専用スマホを利用するため、イオンリテールはスマホを通じて、お客さんに情報を提供することが可能です。
スーパーマーケットはチラシを出していますが、チラシを見ずに買い物をするお客さんもいます。チラシを見ないお客さんは、どの商品が安いのか分からないため、お買い得商品を買い逃してしまう可能性が高いです。
イオンリテールの立場では、お客さんにお買い得商品を購入してもらえないことは問題です。チラシを見ないお客さんにも、スマホを通じてお買い得商品を紹介することで、買い逃しを防止できます。
イオンリテールの既存の買い物体験に大きな問題があるわけではありませんが、「レジゴー」を導入することで、新しい買い物体験を提供できます。
「レジゴー」でお客さんは快適に買い物ができるか
イオンリテールは「レジゴー」を導入することで、レジの待ち時間を短縮し、お客さんに快適に買い物をしてもらう狙いです。
お客さんの立場では、レジの待ち時間の短縮は嬉しいですが、自分で商品をスキャンする負担もあり、快適かどうかは評価が分かれるかもしれません。
自分で商品をスキャンすることは、これまでの買い物にはない作業です。
「レジゴー」を使って買い物をするお客さんは、専用スマホと買い物かごを持つことになります。片手にスマホを持ち、片手に買い物かごを持つか、または、買い物かごの中にスマホも入れます。
商品を購入する際には、買い物かごを地面に置かなければなりません。買い物かごを地面に置いた後、両手を使って購入する商品をスキャンします。
これまでレジで店員が行っていた商品のスキャンを買い物中に自分でやることにより、レジでの待ち時間が短縮される仕組みです。
レジの待ち時間が短縮される快適さよりも、自分で商品をスキャンする不便を大きく感じるお客さんもいると考えられます。レジが混雑していない状況の場合、レジで店員にスキャンしてもらった方が快適です。
レジの待ち時間が短縮されることには確実な価値がありますが、一方で、自分で商品をスキャンする負担もあります。
お客さんに快適な買い物体験を提供するという点では、「レジゴー」には不確実な部分もあり、評価が難しいです。
「レジゴー」は店舗の生産性向上に貢献するか
イオンリテールの「レジゴー」は、お客さんに快適な買い物体験を提供することを目的としています。
「レジゴー」はお客さんに快適な買い物体験を提供することに加え、レジの人件費の削減、購入点数の増加により、店舗の生産性向上も期待できます。
「レジゴー」にはレジの人件費を削減する効果があります。
「レジゴー」では、レジで店員が行っている商品のスキャンをお客さんに買い物中にやってもらいます。レジで店員が行う商品スキャンの作業量が減れば、人件費も減ります。
「レジゴー」を積極的に利用するお客さんは少ないと予想されます。人件費の削減効果を大きくするためには、「レジゴー」の利用率を高めなければなりません。
「レジゴー」にはお客さんの購入点数を増やす効果が期待できます。
「レジゴー」では、専用スマホに購入した商品が表示されるため、買い忘れを防止する効果があります。買い忘れは購入点数の減少、売上の減少と同じことなので、買い忘れが減れば、購入点数が増え、売上が増えます。
お得な商品情報を提供することも、購入点数の増加に繋がります。チラシを見ていない人には、大きな機会損失が発生しています。チラシを見ていない人に対して、お得な商品情報を提供すれば、購入点数が増える可能性は高いです。
「レジゴー」の利用者が増えれば、レジの人件費の削減、購入点数の増加が同時に実現され、店舗の生産性は向上します。
スマホを使って自分で商品をスキャンするレジのあり方
イオンリテールの「レジゴー」のような、お客さんが商品をスキャンするレジは、新しいタイプのレジとして期待されています。
ただ、お客さんには自分で商品をスキャンする負担があるため、利用者が急速に増えるというのは難しそうです。
お客さんが商品をスキャンするレジは、特に高齢者への負担が大きいです。
小売業はセルフレジ、セミセルフレジを導入していますが、高齢者はセルフレジを利用することに負担を感じています。お客さんが商品をスキャンするレジは、セルフレジよりもさらに複雑で、高齢者が好むものではありません。
高齢者は小売業の売上に安定的に貢献しており、小売業にとって重要な存在です。お客さんが商品をスキャンするレジには、高齢者離れを引き起こすリスクもあります。
お客さんが商品をスキャンするレジが定着する形としては、使いたい人には使ってもらい、使いたくない人は使わなくていいというものがベストです。
お客さんが商品をスキャンするレジは、利用してもらった分だけ、店舗の生産性が向上します。小売業の立場では、多くのお客さんに利用してもらいたいところですが、利用者が少なくても効果はあります。
お客さんが商品をスキャンするレジは、既存のレジの利用者を減らします。高齢者は自分がお客さんが商品をスキャンするレジを使わなくても、他の人が使うことで、レジの待ち時間が短くなる効果が得られます。
お客さんが商品をスキャンするレジは、利用者した分だけ効果があるため、使いたい人だけに使ってもらうというやり方が良いです。