11月29日、イオンは英国でネットスーパーを運営する「Ocado Group plc(オカド)」の子会社である「Ocado Solutions」と、日本国内における独占パートナーシップ契約を締結したことを発表しました。
イオンはオカドが保有する、ネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを活用して、次世代のネットスーパーを立ち上げる計画です。イオンのネットスーパーは2030年までに、6,000億円の売上を目標にしています。
イオンと競合するスーパーマーケットの立場では、イオンとオカドの提携は重要なニュースです。現在、多くのスーパーマーケットは、店舗から商品を配送するネットスーパーを運営しています。イオンはオカドとの提携により、フルフィルメントセンターから商品を配送するネットスーパーへと進化し、競合を大きくリードすることになります。
ネットスーパー運営のシステム・ノウハウを持つオカド
11月29日、イオンは英国でネットスーパーを運営する「Ocado Group plc(オカド)」の子会社である「Ocado Solutions」と、日本国内における独占パートナーシップ契約を締結したことを発表しました。
オカドは2000年に設立された、ネットスーパーを運営する企業です。オカドはAIとロボットを活用したフルフィルメントセンター(中央集約型倉庫)、宅配システムなど、ネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを保有しています。
「Ocado Solutions」はオカドの子会社で、オカドが保有する、ネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを小売業に提供する企業です。オカドと提携している小売業には、イギリスの「Marks&Spencer」、アメリカの「Kroger」、スウェーデンの「ICA」、オーストラリアの「Coles」などがあります。
オカドは世界各国の小売業と独占パートナーシップ契約を締結しており、日本ではイオンがパートナーとして選ばれたことになります。
イオンはオカドが保有するネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを活用して、次世代のネットスーパーを立ち上げます。
イオンは2020年3月までに新会社を設立し、2023年には日本第一号となるフルフィルメントセンターを設立する計画です。ネットスーパーの売上目標は、2030年までに6,000億円となっています。
なぜイオンはオカドと提携するのか
イオンは英国のネットスーパー運営企業「オカド」と提携して、次世代のネットスーパーを立ち上げることを発表しました。イオンがオカドと提携した理由は、オカドのシステム・ノウハウを活用することで、早期にネットスーパーを強化するためです。
イオンは店舗から商品を配送するネットスーパーを運営していますが、特に売上が大きく伸びているわけではないようです。
店舗から商品を配送するネットスーパーは、ピックアップ作業、配送のコストが大きく、利益の確保が難しいとされています。イオンにおいても、十分な利益を確保できていないのではないかと推測されます。
イオンが提携したオカドは、店舗を持たず、フルフィルメントセンターから商品を配送するネットスーパーを運営しています。イオンはオカドが保有する、ネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを活用することで、フルフィルメントセンターから商品を配送するネットスーパーを立ち上げることができます。
ネットスーパーはこれまでにない新しい事業であるため、システム・ノウハウを持つ企業は少ないです。
オカドは自社でネットスーパーを運営するとともに、世界各国でも、小売業のネットスーパーの運営を支援しています。オカドはネットスーパーの運営に必要なシステム・ノウハウを保有する、数少ない企業です。
ネットスーパーを早期に強化する、競合他社のネットスーパーと差別化するという点において、オカドとの提携には大きなメリットがあります。
オカドとの提携でイオンのネットスーパーの売上は伸びるか
イオンはオカドとの提携で、2030年までにネットスーパーの売上6,000億円を目標にしています。売上6,000億円が達成されるかどうかは分かりませんが、オカドのシステム・ノウハウを活用することにより、ネットスーパーの売上は増えると思います。
お客さんはネットスーパーに、品揃え、鮮度、価格、配送などを求めています。しかし、店舗からの配送では、こうしたお客さんの期待に応えることが難しいです。店舗はネットスーパーのお客さんのために設計されているわけではないからです。
イオンは2023年に、日本第一号となるフルフィルメントセンターを設立する計画です。フルフィルメントセンターはネットスーパー専用のもので、ネットスーパー全体の買い物体験の改善に貢献します。
ネットスーパーの買い物で使用する、スマホアプリの改善も重要です。
ネットスーパーの買い物にはスマホアプリを使用しますが、買い物体験は必ずしも快適であるとは言えません。複数の商品を購入すると、スマホアプリの操作に時間が掛かります。ネットスーパーでの買い物を毎週行う場合、スマホアプリの操作に多くの時間を費やすことになります。
ネットスーパーの買い物において、スマホアプリの操作は少ないほどよく、買い物時間も短いほどよいです。スマホアプリはネットスーパーの売上と関係しており、改善の余地が大きいです。
オカドとの提携により、フルフィルメントセンターが設立され、スマホアプリが改善されれば、イオンのネットスーパーの売上は増えると思います。
ネットスーパーの利用者はいつになったら増えるか
現在のところ、ネットスーパーの利用者は多くはないものの、いつかは利用者が増える時が来るとされています。具体的な時期がいつになるのかは分かりませんが、お客さんの時短意識の高まり、ネットスーパーの低価格がポイントになると思います。
ネットスーパーは自宅から注文でき、商品が自宅に届きます。近所にスーパーマーケットがない人にとっては、ネットスーパーは買い物時間を短縮する効果があります。仕事、家庭、趣味など、忙しい人が増え、時短意識が高まれば、ネットスーパーで買い物をする人が増えると考えられます。
様々な時短関連商品が登場していて、お客さんの時短意識は高まりつつあります。
人気の時短関連商品には、冷凍食品、ミールキット、コインランドリー、大型洗濯機、ロボット掃除機などがあります。普段の生活でこうした時短関連商品に触れる機会が増えれば、加速度的にお客さんの時短意識が高まります。
お客さんの時短意識が高まれば、ネットスーパーも時短関連商品と見られるようになり、利用者が増えます。
ネットスーパーの価格も、利用者の増加と関係しています。
お客さんはネットスーパーの買い物が便利だとしても、価格が高ければ買い物をしたくはありません。ネットスーパーが利用者を増やすためには、人気商品、有名商品を低価格で販売しなければなりません。低価格の商品で利用者を増やした後、カテゴリを拡大することで、客単価を高めたいです。
ネットスーパーの利用者が増えるには、お客さんの時短意識の高まり、ネットスーパーの低価格が両立する必要があると思います。
イオンとオカドの提携がスーパーマーケットに与える影響
イオンはオカドと提携して、次世代のネットスーパーを立ち上げることを発表しました。イオンと競合するスーパーマーケットの立場では、イオンとオカドの提携はショッキングなニュースではないかと思います。
スーパーマーケットが運営するネットスーパーは、店舗から商品を配送する仕組みです。どこのスーパーマーケットのネットスーパーも、サービス内容に大きな違いはなく、横並びの状況が長く続いています。
イオンはオカドと提携したことで、フルフィルメントセンターを用いた、先進的なネットスーパーへと進化します。店舗から商品を配送する、従来のネットスーパーの競争から抜け出すことになります。
スーパーマーケットが単独でネットスーパーを強化することは難しく、IT企業との連携が行われています。西友は楽天と、ライフコーポレーションはAmazonと提携しており、今回、イオンは英国企業のオカドと提携しました。
スーパーマーケットと連携できるIT企業は多くはなく、今後、スーパーマーケットはネットスーパーを強化する、適切なパートナーと見つけられない可能性もあります。
オカドが世界各国の小売業と独占パートナーシップ契約を提携していることも、スーパーマーケットにとっては不安な点です。
オカドは一つの国に複数のネットスーパーが存在する必要はなく、一社だけ存在すればいいと考えているのかもしれません。オカドのネットスーパーはフルフィルメントセンターから商品を発送します。イオンが日本全国にフルフィルメントセンターを設立することで、ネットスーパーの大きなシェアを獲得する可能性もあります。
イオンはオカドとの提携で、ネットスーパーを大きく進化させる予定です。競合のスーパーマーケットにはこれといった対応策がなく、悩ましいところです。