5月22日、日本百貨店協会は4月の百貨店の売上高が1,208億円(前年比72.8%減)だったと発表しました。4月は緊急事態宣言の発出があったため、人々は外出を自粛し、百貨店は営業を自粛したため、売上高は大幅に減少しました。
5月25日に全国の緊急事態宣言が解除され、百貨店は営業を再開しましたが、売上高がいつごろ戻るのかというのは分かりません。
新型コロナウイルスと共生する「ウィズコロナ」においては、百貨店は人との接触を減らし、ECを拡大しなければなりません。
百貨店の4月の売上高は大幅に減少
5月22日、日本百貨店協会は4月の百貨店の売上高を発表しました。
4月の百貨店の売上高は1,208億円となり、前年比72.8%減でした。3月の売上高は前年比33.4%減だったため、4月は減少幅が拡大しています。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、4月7日には7都道府県に緊急事態宣言が発出され、4月16日には全国に拡大しました。人々は外出を控え、百貨店は営業の自粛を行ったことにより、4月の売上は大きく減少することになりました。
地区別の売上高は次のようになっています(売上高の単位は千円)。
売上高 | 構成比 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
10都市 | 77,268,061 | 63.9 | -76.0 |
10都市以外の地区 | 43,625,925 | 36.1 | -64.2 |
全国 | 120,893,986 | 100.0 | -72.8 |
10都市とは、札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡です。10都市以外の地区とは、北海道、関東、中部、近畿、中国、四国、九州です。
10都市が10都市以外の地区よりも売上高の減少幅が大きいのは、新型コロナウイルスの影響が大きいためだと考えられます。
インバウンドの売上高は5億円で、前年比98.5%減、購買客数は99.5%減でした。インバウンドの売上高の減少は、10都市の売上高の減少に影響を与えています。
商品別の売上高は次のようになっています(売上高の単位は千円)。商品券の売上高は総額に含まれていません。また、構成比は必ずしも100%にはならず、商品券の構成比は総額に対する比率です。
売上高 | 構成比 | 前年比(%) | |
---|---|---|---|
衣料品 | 24,008,975 | 19.9 | -82.7 |
身のまわり品 | 10,387,188 | 8.6 | -82.8 |
雑貨 | 19,811,404 | 16.4 | -78.7 |
家庭用品 | 7,207,194 | 6.0 | -59.6 |
食料品 | 49,965,591 | 41.3 | -53.0 |
食堂喫茶 | 1,152,251 | 1.0 | -89.9 |
サービス | 1,277,650 | 1.1 | -73.1 |
その他 | 7,083,733 | 5.9 | -28.0 |
商品券 | 2,568,264 | 2.1 | -70.7 |
総額 | 120,893,986 | 100.0 | -72.8 |
すべての商品の売上高が大幅に減少していますが、食品は相対的に売上高の減少幅が小さいです。多く店舗が営業を自粛しましたが、食品の売り場だけは自粛をせず、営業を続ける店舗があったためです。
4月は緊急事態宣言が発出されたため、3月よりも売上高の減少幅が拡大しました。
百貨店の売上高が戻るのはいつごろか
5月25日に全国の緊急事態宣言が解除され、百貨店は営業を開始しました。
百貨店の売上高は徐々に戻る見込みですが、いつごろ以前のように戻るかは予想が難しいです。
百貨店の売上高の多くは、高齢者のお客さんによるものです。高齢者のお客さんがしっかりと戻ってくるかどうかは、百貨店の売上高が戻るかどうかに関係しています。
新型コロナウイルスへの対応で生活様式が変わり、消費者の買い物にも変化が出ました。ECでの買い物が増える、買い物回数を減らして買いだめをする、混雑している店舗を避ける、少人数で買い物をするといったものです。
高齢者にもこのような買い物の変化が起これば、以前のように百貨店で買い物をしなくなる可能性があります。
高齢者の買い物方法はあまり変わらず、百貨店への影響は大きくはないと考えられますが、実際にどうなるかは分かりません。高齢者が以前のように百貨店で買い物をしなくれば、百貨店の売上高は減少してしまいます。
インバウンドが今後どうなるのかは分かりません。
世界的にインバウンドが以前のように戻るには、4~5年は掛かるという予想があります。また、もう以前のようには戻ることはないという意見もあります。
百貨店が中国人を含めた、アジアの観光客に依存していることはポジティブです。アジアは日本との関係が強いため、早期に日本に戻って来そうです。世界的にインバウンドが戻らなくても、アジアだけ戻れば、百貨店の売上高は増えます。
外国人観光客の入国がいつごろ許可されるのかは分かりませんが、少なくとも数ヶ月は掛かるのではないでしょうか。
百貨店は早く売上高が以前のように戻って欲しいですが、売上高への貢献が大きい、高齢者、インバウンドの動向が重要です。
百貨店はウィズコロナにどう対応するか
新型コロナウイルスが収束することはなく、新型コロナウイルスと共生する「ウィズコロナ」に対応しなければならないと言われています。
百貨店がウィズコロナへの対応に必要なことは、店舗における人との接触を減らすこと、ECを拡大することです。
新型コロナウイルスへの感染を防ぐため、多くの人が人との接触を減らしたいと考えています。百貨店は高齢者のお客さんが多いため、人と接触を減らす取り組みは、他の小売業よりも重要です。
百貨店の食品売り場は人気ですが、混雑しやすいことが問題です。混雑を減らさなければ、お客さんが買い物に来なくなる可能性があります。
百貨店は時間を掛けた丁寧な接客をしていますが、人との接触が多いことは問題です。人との接触を減らさなければ、お客さんが買い物に来なくなる可能性があります。
ECの拡大は百貨店にとって重要な取り組みです。
新型コロナウイルスによる生活様式の変化で、ECで買い物をする人が増えました。以前から百貨店はECが弱いと言われて来ましたが、ウィズコロナの状況においては、ECの強化が不可欠になっています。
人との接触を減らすこと、ECを拡大することは、百貨店の強みである接客、店舗を否定するようなものです。しかし、このようなウィズコロナの取り組みを進めなければ、百貨店は客離れを引き起こすリスクがあります。
多くの人が百貨店なしの生活を送ったことは不安
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、4月から5月にかけて、百貨店は営業を自粛しました。
百貨店が営業を自粛している間、多くの人が百貨店がない生活を送っており、百貨店への評価がどのように変わったのかは不安です。
百貨店の商品の中で、最も売上高構成比が大きいのは衣料品で、売上高全体の約3割を占めています。
これまで百貨店で衣料品を購入していた人のなかには、百貨店が営業を自粛している間に、ECで衣料品を買った人もいるはずです。ECで衣料品を購入して満足した人は、百貨店じゃなくてもいいな、ECもいいなと考える人もいるかもしれません。
衣料品に次いで売上高構成比が大きいのは食品で、こちらも売上高全体の約3割を占めています。
これまで百貨店で食品を購入していた人のなかには、百貨店が営業を自粛している間に、スーパーマーケットなどの他の店舗で食品を買った人もいるはずです。百貨店の食品は好きだけど、他の店舗の食品もいいなと考える人もいるかもしれません。
お客さんは新型コロナウイルスにより、百貨店との接触が減り、他の小売業との接触が増えました。他の小売業の評価が高まり、百貨店の評価が下がるようなことが起きれば、百貨店にとっては大きな問題です。
百貨店は営業自粛により、お客さんの百貨店への評価がどのように変化したのか、見守らなければなりません。