11月13日、ファーストリテイリングは物流倉庫の自動化、サプライチェーンの強化のため、MUJIN、 フランス企業のExotec Solutions SAS とパートナーシップを締結したと発表しています。MUJINはピッキングロボットの開発、 Exotec Solutions SAS は物流倉庫の海外展開を支援します。
近年、ファーストリテイリングはサプライチェーンを強化しています。ファーストリテイリングがサプライチェーンを強化する理由は、世界各国への出店、Eコマースの拡大により、サプライチェーンの重要性が高まっているからだと考えられます。
国内ユニクロ事業は店舗数が減少傾向にあり、売上高増加率も低いです。今後、店舗数の増加で売上が増えることは期待しにくいですが、サプライチェーン、Eコマースの強化で売上を増やすチャンスはありそうです。
MUJINとExotec Solutions SAS
11月13日、ファーストリテイリングはMUJIN、フランス企業のExotec Solutions SASとサプライチェーン領域における、戦略的グローバルパートナーシップに関する合意書を締結したと発表しています。
ファーストリテイリングは両社の持つ専門知識、経験を活用して、物流倉庫の自動化・グローバル化を加速し、サプライチェーンを強化する計画です。
MUJINは産業用ロボット向け知能ロボットコントローラー・ソフトウェアの開発・販売を行う企業です。
ファーストリテイリングはMUJINと共同でピッキングロボットを開発して、世界各国の物流倉庫に導入して行く計画です。形状が柔らかく、種類が豊富なアパレル商品のピッキング作業の自動化は難しいと考えられて来ましたが、ファーストリテイリングとMUJINは自動化を実現したとのことです。
Exotec Solutions SASはロボットの活用により、ロジスティクスの領域で俊敏性・拡張性・柔軟性を実現することをビジョンする、フランスの企業です。Exotec Solutions SASは、ファーストリテイリングの海外拠点を支援するパートナーです。
ファーストリテイリングは2018年10月、物流倉庫の自動化を実現するため、ダイフクと戦略的グローバルパートナーシップを締結しています。今回、MUJIN、Exotec Solutions SASと戦略的グローバルパートナーシップを締結したことにより、パートナー企業が一社から三社へと増えました。
MUJINはピッキング作業の自動化、Exotec Solutions SASは海外の物流倉庫の自動化で、ファーストリテイリングのサプライチェーンの強化に貢献して行くことになります。
なぜサプライチェーンの強化に取り組むのか
近年、ファーストリテイリングはサプライチェーンの強化に注力しています。製造小売業であるファーストリテイリングにとって、サプライチェーンは以前から重要なものでしたが、近年はその重要性がさらに高まっていると言えます。
適切な商品を、適切な場所に、適切な数量を、適切なタイミングで確保するというのがサプライチェーンで実現したいことです。商品がなければお客さんに販売することができず、売上を逃してしまいます。一方で、商品があり過ぎれば売れ残り、販売の機会損失、値下げの損失が発生します。
ファーストリテイリングの戦略的グローバルパートナーシップである、ダイフク、MUJIN、Exotec Solutions SASは、サプライチェーンを強化する専門知識、経験を保有する企業です。テクノロジーの進化により、サプライチェーンを強化する機会が生まれています。
お客さんが実店舗だけではなく、Eコマースでも買い物にするようになったことも、サプライチェーンと関係があります。実店舗、Eコマースの両方に適切な商品がなければ、機会損失が起こり、売上を失いやすくなっています。
ファーストリテイリングがグロール企業であることも、サプライチェーンと関係があります。世界的に無駄に対する意識が高まっていて、商品を作りすぎたり、資源を無駄にすることに対して、消費者の目が厳しくなっています。
ファーストリテイリングにとって、サプライチェーンは重要なものです。収益性を改善するため、優れた買い物体験を提供するため、無駄を減らすため、グローバル企業としてのイメージを高めるため、サプライチェーンへの投資が行われます。
MUJINのピッキングロボットは何が重要なのか
ファーストリテイリングとMUJINが共同開発したピッキングロボットは、アパレル商品を自動でピッキングするものです。ピッキングの自動化は物流倉庫の完全自動化のために必要なもので、物流倉庫の海外展開にも貢献するものだと言えます。
物流倉庫の生産性向上に多くのEC企業が取り組んでいて、物流倉庫にはロボットが導入されています。
インターネットのニュース、動画でよく目にするのは、商品棚の下に潜り込み、商品棚を背負って移動する自律走行ロボットです。自律走行ロボットが商品棚をピッキング担当者のもとまで運ぶので、ピッキング担当者は商品棚まで歩く必要がなくなります。
ファーストリテイリングの物流倉庫では、商品のピッキングもロボットが行うため、より先進的に自動化された物流倉庫です。
物流倉庫の生産性を向上させるという点では、人間が担当する作業が少なければ少ないほど良いです。
機械は人間と比べると、仕事を休まない、仕事を辞めない、給料が上がらないといった特徴があります。機械のこのような特徴は物流倉庫の運営を安定化させ、物流倉庫の生産性・収益性の向上に貢献します。
ファーストリテイリングはグローバル企業であるため、世界各国で異なるバックグランドを持つ従業員が働いています。仕事のやり方、考え方は世界各国で異なるため、グローバルで物流倉庫を安定的に運営することは困難な作業です。
物流倉庫を完全自動化すれば、従業員への依存度を減らすことができ、世界各国の従業員の差を吸収できます。物流倉庫の運営を従業員に依存しない仕組みがあれば、ファーストリテイリングの海外展開はより容易になります。
自動ピッキングロボットは単に物流倉庫の生産性を向上させるだけではなく、物流倉庫のグローバル展開においても、重要な役割を果たします。
Eコマースの売上が増えると店舗はどうなるのか
ファーストリテイリングはサプライチェーンの強化に取り組んでいますが、主にEコマースのためのものであると考えられます。ファーストリテイリングではEコマースの売上が急増するなかで、ユニクロの店舗数は増えていません。店舗が今後どうなるのかは予測が難しく、現状を維持するような状況が続くのではないかと思います。
ファーストリテイリングの店舗とEコマースの売上高増加率を比較すると、Eコマースの売上高増加率は店舗よりもかなり高いです。
ファーストリテイリングの2019年8月期の決算によると、国内ユニクロ事業の売上収益は872,957百万円(前期比0.9%増)、Eコマース売上高は832億円(前期比32.0%増)、Eコマースの売上構成比は9.5%(前期比2.2ポイントアップ)でした。国内ユニクロ事業の売上収益は、Eコマース売上高を含んでいます。
ファーストリテイリングはユニクロとジーユーを展開していますが、近年、ユニクロの店舗数は増えていません。2019年8月期の店舗数は、国内ユニクロは817店舗、ジーユーは421店舗でした。2015年8月期の店舗数は、国内ユニクロは841店舗、ジーユーは319店舗であったため、国内ユニクロの店舗は減少しています。
国内ユニクロ事業の売上の約9割が店舗から来ているものの、売上高増加率は低いです。一方、Eコマースは売上の約1割ほどではあるものの、売上高増加率は非常に高く、継続的な成長が期待できます。
国内ユニクロの店舗数は減少傾向にあり、今後、積極的な新規出店が行われる可能性は低そうです。Eコマースの売上高増加率は店舗よりも高く、店舗はEコマースの成長を支援する役割を担当するようになるのではないでしょうか。
ユニクロは国内でさらに売上を伸ばせるチャンスがある
ファーストリテイリングは国内のユニクロの店舗数を増やしておらず、国内ユニクロ事業の売上高は伸び悩んでいます。国内ユニクロ事業には停滞感もありますが、サプライチェーンとEコマースの強化で、さらに売上を伸ばすチャンスがあると思います。
Eコマースには商圏がなく、日本全国に商品を販売することができます。
ユニクロの店舗は国内に817店舗(2019年8月期)ありますが、多くの人にとって、身近な店舗ではありません。ユニクロの商品を買いたいけど、店舗が遠くにあるので行くのがの大変、あるいは、近所に店舗がない人もいます。
ユニクロの商品は多くのお客さんに認知されていて、Eコマースで買い物をする不安は小さいです。お客さんがEコマースで買い物がしやすい環境を整えれば、Eコマースの売上高増加率はさらに高まるのではないでしょうか。
サプライチェーンとEコマースの強化により、店舗の機会損失も解消できます。
ユニクロの店舗で買い物をしていて、欲しい色、サイズがないというのはよくあります。自分が欲しい色、サイズがない場合、多くのお客さんは注文をせずに帰ってしまいます。商品が欠品している場合、お客さんをEコマースに誘導して、素早く商品を発送することで、これまで逃していた売上を獲得できます。
ユニクロの商品が優れていて、お客さんに広く認知されていることは、Eコマースの拡大に有利に働きます。Eコマースの買い物体験の改善、納期の短縮に注力すれば、Eコマースの売上はさらに伸びる可能性があります。