イケアがスマホアプリ「IKEAアプリ」を配信、世界でいちばん小さなイケアストア

4月30日、イケアは新しいスマホアプリ「IKEAアプリ」を配信しました。「IKEAアプリ」のコンセプトは、世界でいちばん小さなイケアストアです。

「IKEAアプリ」の特徴は写真を使ったショールーム機能です。「IKEAアプリ」では、家具・インテリアを設置した部屋の写真が表示され、見て楽しむだけでなく、欲しいものリストへの保存、通販サイトでの注文も可能です。

イケアの競合であるニトリの「ニトリアプリ」と比較すると、「IKEAアプリ」は店舗との連携が弱いです。イケアは店舗数が10店舗と少なく、店舗と連携した買い物体験よりも、ネット通販への誘導に注力しています。

「IKEAアプリ」の機能

4月30日、イケアは新しいスマホアプリ「IKEAアプリ」を配信しました。「IKEAアプリ」のコンセプトは、世界でいちばん小さなイケアストアというものです。

「IKEAアプリ」の特徴的な機能はショールームのような買い物体験です。

「IKEAアプリ」のトップには、家具・インテリアを設置した部屋の写真が並べられています。写真を開くと、それぞれの家具・インテリアを選択することができ、欲しいものリストに保存したり、通販サイトで注文できます。

欲しいものリストに保存した家具・インテリアは、イケアの店舗に買い物に出掛けた際には、売り場、在庫状況の確認に利用できます。また、「IKEAアプリ」のバーコードスキャナーを使い、材質、寸法、レビューなどの情報を確認できます。

「IKEAアプリ」には閲覧履歴を元に、おすすめの部屋例が表示するパーソナライズ機能もあります。

その他にも、店舗検索、商品検索、IKEA Familyの会員証、セール情報などの機能があります。

「IKEAアプリ」の優れている点はなにか

イケアは世界でいちばん小さなイケアストア「IKEAアプリ」を配信しました。

「IKEAアプリ」の優れている点は、お客さんにインスピレーションを与える、写真を使った家具・インテリアのショールーム機能です。

小売業のスマホアプリには、商品を検索する機能が付いていることがあります。検索ボックスにキーワードを入力して、お客さんが能動的に商品を探します。

「IKEAアプリ」の写真を使ったショールームでは、お客さんは能動的に商品を探すわけではありません。「IKEAアプリ」が表示する写真を見て、気になった家具・インテリアがあれば、欲しいものリストに入れたり、通販サイトで注文します。

家具・インテリアは商品のデザイン・機能だけではなく、他の家具・インテリアとの組み合わせも重要です。お客さんは自分が欲しいものを検索で見つけることは難しく、「IKEAアプリ」の写真を使ったショールームは便利です。

インスタグラムでも家具・インテリアの写真は人気で、見ている人は多いと思います。インスタグラムの家具・インテリアの写真を見ることは楽しいですが、販売企業、価格などの詳細が分からないので、時間を無駄にしたような徒労感もあります。

「IKEAアプリ」では、インスタグラムと同じように家具・インテリアの写真を楽しめて、さらに買い物もできます。インスタグラムで家具・インテリアの写真を見るよりも、「IKEAアプリ」で見る方が生産的です。

「IKEAアプリ」はお客さんに家具・インテリアの写真を多く見てもらい、インスピレーションを与え、ネット通販の売上に繋げるというフローになっています。

「IKEAアプリ」と「ニトリアプリ」の違いはなにか

イケアとニトリはともに家具・インテリアを販売しており、両社のスマホアプリを比較すると、デジタル戦略の違いが分かります。

「IKEAアプリ」はお客さんにインスピレーションを与え、通販サイトに誘導することが目的です。一方、「ニトリアプリ」は店舗と通販サイトを連携させ、店舗での買い物体験を向上させることが目的です。

「IKEAアプリ」の特徴は写真を使ったショールームです。お客さんに家具・インテリアのインスピレーションを与え、通販サイトでの売上に繋げようとしています。

「ニトリアプリ」の特徴は店舗と通販サイトの連携です。「ニトリアプリ」では、店舗、通販サイトの両方でお気に入り商品を共有できます。

ネット通販で保存したお気に入り商品は、店舗の展示の有無・在庫状況を確認できます。店舗でバーコードを読み込んで保存したお気に入り商品は、簡単な操作で通販サイトで注文できます。

お気に入り商品を店舗での買い物に使えば、店舗で商品を持ち運ぶことなく、購入の手続きを済ませることができます。

「IKEAアプリ」と「ニトリアプリ」のデジタル戦略の違いは、店舗数と関係があります。イケアの店舗数が10店舗であるのに対して、ニトリの店舗数は541店舗(2020年2月期末時点)です。

IKEAの店舗数は少なく、多くのお客さんにとって身近にある店舗ではありません。したがって、「IKEAアプリ」は通販サイトへの誘導に注力することになります。

一方、ニトリの店舗数は多く、多くのお客さんにとって身近にある店舗です。「ニトリアプリ」では、店舗と通販サイトが連携した買い物体験がうまく機能します。

「IKEAアプリ」と「ニトリアプリ」の両方を使う人は、「ニトリアプリ」の方が便利だと感じるかもしれません。店舗と通販サイトが連携した買い物体験においては、店舗数が多いニトリの方が優位です。

「IKEAアプリ」と大型店の連携

イケアは日本全国に10店舗を展開しています。

イケアの大型店は高齢化が進む日本との相性が悪く、「IKEAアプリ」と店舗を連携させることで、便利な買い物体験を生み出したいところです。

イケアの買い物体験は、お客さんが自動車で遠くから買い物に来て、自分で商品を運び、自動車に積み、家に持って帰り、組み立てるというものです。お客さんの負担は大きいですが、その分だけ商品の価格が安くなります。

イケアの買い物体験は日本にはないもので、外資系小売業ということもあって人気が出ました。しかし、高齢化社会の影響もあり、イケアには停滞感があります。

イケア・ジャパンの過去3年間の業績は次のようになっています(売上高、営業利益・営業損失の単位は百万円)。

売上高 営業利益 営業利益率
2017年8月期 74,059 -1,446
2018年8月期 84,091 -962
2019年8月期 84,476 -859

2018年8月期は「IKEA長久手」の新規出店で売上高が伸びていますが、2019年8月期は微増で、既存店が好調といった感じはありません。

イケアが業績を伸ばすために必要なものは、お客さんの体力に依存しない買い物体験ではないかと思います。イケアの店舗は遠くにあり、店舗面積は広く、家具は重く、歳を取るにつれ、ますます買い物が大変になります。

店舗に行くこと、店内を歩ことは仕方がありませんが、家具を持ち運ぶこと、自宅に持って帰ることはなくしたいです。「IKEAアプリ」で購入する商品のバーコードを読み込み、ネット通販で注文するというのが良さそうです。

イケアのネット通販は送料が高いため、値下げが望ましいです。

少子高齢化による客数・従業員数の減少のため、小売業では店舗の生産性向上が不可欠になっています。イケアは小売業の中でも特に生産性向上が難しい企業の一つであり、「IKEAアプリ」と大型店がどのように連携するのかは参考になります。