5月11日、三越伊勢丹ホールディングスは決算説明会を行い、デジタル強化ポイントとして、EC、ワン・ツー・ワン・マーケティング、安心安全の三つを挙げました。
EC、ワン・ツー・ワン・マーケティングはお客さんのニーズがあり、三越伊勢丹の売上の増加にも繋がるものです。安心安全は新型コロナウイルスへの対応で、三越伊勢丹がお客さんを呼び戻すために必要なものです。
新型コロナウイルスの影響により、お客さんの生活様式、買い物方法は変わりました。小売業においても、デジタルマーケティングの重要性はさらに高まりました。
三越伊勢丹のデジタル強化ポイント
5月11日、三越伊勢丹ホールディングスは決算説明会を行いました。
決算説明会の中で、今後のデジタル強化ポイントとして、EC、ワン・ツー・ワン・マーケティング、安心安全の三つを挙げています。
ECのコンセプトは「いつでも手の中に三越伊勢丹を」というもので、店舗とスマートフォンの融合を進めます。具体的な内容は、商品・イベント情報の一元化、シームレスなスマホアプリの開発の二点となっています。
ワン・ツー・ワン・マーケティングでは、店舗、ECの両方でスタイリストがお客さん一人一人におもてなしができる体制の構築を進めます。
具体的な内容は、チャットによる接客、スマホアプリのレコメンド、足のサイズの3D計測サービス、ECの品揃え充実の四点となっています。
安心安全については、新型コロナウイルス収束後を見据えたものです。
具体的な内容は、来店の事前予約、事前決済などによる接触機会の削減、伝票の電子化、混雑情報の発信の四点となっています。
三越伊勢丹のデジタルマーケティングでは、EC、ワン・ツー・ワン・マーケティング、安心安全の三つを強化して行く計画です。
なぜECを強化するのか
ECは三越伊勢丹のデジタル強化ポイントの一つです。
三越伊勢丹がECを強化する理由は、お客さんのニーズがあり、売上の増加が見込めるためです。
三越伊勢丹のECでは、EC単体、ECと実店舗の融合、二つの戦略があります。
EC単体では、品揃え、買い物体験を強化することで売上の増加が期待できます。
三越伊勢丹は有名な百貨店ですが、店舗は大都市にしかなく、身近にある店舗ではありません。三越伊勢丹の商品を買おうとしても、近くに店舗がないという人はたくさんおり、ECの需要は大きいです。
三越伊勢丹の商品には実績と信頼があり、高価格の商品を購入するECとして選ばれやすい点は強みです。
ECと実店舗の融合により、売上の増加が期待できます。
ECで商品を見たあとで実店舗で買う、実店舗で見たあとでECで買うというのは、お客さんが望んでいる買い物体験です。
ECと実店舗が融合することで、実店舗に出掛けたけどいい商品がなかった、前に実店舗で見た商品が欲しいけど忘れたといったストレスがなくなります。
三越伊勢丹の店舗は遠くにあり、店舗は大きく品揃えも豊富です。お客さんは買い物に労力を費やしており、ECと実店舗が融合するメリットは大きいです。
店舗に出掛けたけどいい商品がなかった、前に店舗で見た商品が欲しいけど忘れたなどのケースは、三越伊勢丹にとっては売上を逃す機会損失です。このような機会損失の解消は、三越伊勢丹の売上の増加に繋がります。
三越伊勢丹のECは将来が有望な事業で、EC単体、ECと実店舗の融合、両方で売上の増加が見込めます。
なぜワン・ツー・ワン・マーケティングを強化するのか
ワン・ツー・ワン・マーケティングは三越伊勢丹のデジタル強化ポイントの一つです。
三越伊勢丹がワン・ツー・ワン・マーケティングを強化する理由は、お客さんのニーズがあり、売上の増加が見込めるためです。
三越伊勢丹がワン・ツー・ワン・マーケティングを強化する内容は、チャットによる接客、スマホアプリのレコメンド、足のサイズの3D計測サービス、ECの品揃え充実の四点となっています。
これらはお客さん一人一人への提案を強化するためのものです。
お客さんはワン・ツー・ワン・マーケティングに強い関心を持っていて、小売業からの提案に期待しています。
商品のレコメンドは多くのECサイトに導入されていて、お客さんは適切なレコメンドをするECサイトで買い物をします。お客さんにいかに適切な商品を提案できるかどうかは、競合のECサイトとの差別化ポイントになります。
三越伊勢丹が持つ実店舗と豊富な品揃えは、ワン・ツー・ワン・マーケティングに活用できます。
チャットや接客のログ、実店舗とECサイトの買い物履歴、実店舗で採寸した靴のサイズといった情報は、ワン・ツー・ワン・マーケティングのベースになるものです。
実店舗で採寸した靴のサイズを使って、ECサイトで買い物をするというのは、三越伊勢丹ならではの買い物体験です。
三越伊勢丹は個性的な商品、高価格の商品を多数保有しており、お客さんに質の高い提案が可能です。
ワン・ツー・ワン・マーケティングを通じて、お客さんにたくさんの商品を見てもらうことは、ECと実店舗の両方の売上に繋がります。
なぜ安心安全を強化するのか
安心安全は三越伊勢丹のデジタル強化ポイントの一つです。
三越伊勢丹が安全安心を強化する理由は、新型コロナウイルスで遠ざかったお客さんを呼び戻すために不可欠だからです。
三越伊勢丹は新型コロナウイルスへ対応するため、首都圏の店舗は臨時休業しています。お客さんは百貨店で買い物をしない生活を送っており、今後、三越伊勢丹がお客さんを呼び戻すのには時間が掛かることが予想されます。
新型コロナウイルスの影響により、お客さんは混雑した店舗での買い物を避けるようになっています。三越伊勢丹がお客さんを呼び戻すためには、お客さんの買い物の不安を解消しなければなりません。
三越伊勢丹が安心安全を強化する内容は、来店の事前予約、事前決済などによる接触機会の削減、伝票の電子化、混雑情報の発信の四点となっています。
これらの施策には、混雑を避ける、店員との接触を減らす、滞在時間を短くするといった効果があり、お客さんに喜ばれます。
安心安全は三越伊勢丹がお客さんを呼び戻すために不可欠なものですが、長期的にはデメリットもあります。お客さんと店員との接触が減り、滞在時間が短くなれば、三越伊勢丹の売上は減少します。
お客さんと店員との接触が減り、滞在時間が短くなる部分については、ECやワン・ツー・ワン・マーケティングで補わなければなりません。
三越伊勢丹の生産性向上が難しい構造的な問題
三越伊勢丹はデジタルマーケティングにおいて、EC、ワン・ツー・ワン・マーケティング、安心安全の三つを強化します。
三越伊勢丹はデジタルの強化で生産性向上を目指しますが、実現することが難しい構造的な問題があります。
三越伊勢丹のデジタルマーケティングは、実店舗とECサイト、スマホアプリを融合することにより、売上を伸ばし、生産性を向上させるというものです。
三越伊勢丹の問題は店舗が遠くにあり、来店頻度が低いことです。
三越伊勢丹が実店舗とECサイトのシームレス化を進めたとしても、お客さんが実店舗とECサイトを頻繁に行き来することは難しいです。多くのお客さんにとって、三越伊勢丹の店舗は遠いです。
三越伊勢丹がECを強化すれば、ECサイトでの買い物が増え、実店舗での買い物が減る可能性があります。ECサイトでの買い物が増えても、実店舗での買い物が減れば、三越伊勢丹の生産性向上には繋がりません。
三越伊勢丹の店舗はお客さんからの距離が遠いだけではなく、運営コストが大きいことも問題です。実店舗からECサイトへとお客さんが流出することになれば、店舗の生産性が低下します。
三越伊勢丹が強化するEC、ワン・ツー・ワン・マーケティング、安心安全の三つには、それぞれ効果が期待できます。しかし、それらがまとまって三越伊勢丹の生産性を向上させるというのは難しそうです。
三越伊勢丹がデジタルマーケティングで生産性を向上させるためには、店舗が持つ構造的な問題を解消する施策が必要です。