12月24日、厚生労働省は2019年の人口動態統計の年間推計を発表しました。2019年の出生数は86万4,000人で、2018年の91万8,400人から5.9%減少しています。
少子化が続く理由は、出産可能な若い女性が減少しているためです。現在の少子化は、20~40年前の少子化に起因しています。晩婚化、非婚化も少子化の理由の一つですが、出産可能な若い女性の減少ほど重要ではありません。
少子化は日本の大きな社会問題で、小売業にも影響を与えます。人口が減少すれば、店舗で買い物するお客さん、店舗で仕事をする従業員が減ります。小売業が少子化に対応するためには、より少ないお客さん、従業員でも、利益を確保できる店舗が必要です。
2019年の出生数は86万4,000人(前年比5.9%減)
12月24日、厚生労働省は2019年の人口動態統計の年間推計を発表しました。
2019年の出生数は86万4,000人で、2018年の91万8,400人から5.9%減少しています。出生数が90万人を下回るのは、1899年の統計開始以来初めてのことです。
国立社会保障・人口問題研究所は2017年4月に、将来人口推計を発表しています。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、出生数が90万人を割り込むのは2020年(88万6,000人)、86万人台となるのは2021年(86万9,000人)でした。
少子化のスピードは2017年4月時点での予測を上回っており、今後、さらに加速する可能性もあります。
出生数が初めて100万人を下回ったのは2016年で、97万7,242人でした。その後、2017年、2018年、2019年の3年間で出生数は10万人以上減少しており、毎年過去最低の出生数を更新しています。
出生数は1970年代前半をピークに、その後は右肩下がりに減少が続いています。1970年代前半の出生数は200万人ほどで、2019年の倍以上です。
少子化は昔から続いて来ている問題ですが、最近になるまで、大きな問題として認識されていませんでした。近年はインターネットで情報が共有できるようになったことで、少子化の情報が広く行き渡り、社会問題として認識されるようになりました。
少子化は人口の減少に繋がり、社会に様々な問題を引き起こすことになります。
なぜ少子化は続くのか
1970年代以降、少子化は続いています。近年、少子化は社会問題として認識されるようになり、少子化を食い止める取り組みが行われています。多くの努力にも関わらず、少子化に歯止めがかからない理由は、出産可能な若い女性が減少しているためです。
少子化の原因は多数あると考えられますが、もっとも影響が大きいのが出産可能な若い女性の減少です。
1970年代前半の出生数が200万人ほどであるのに対して、2019年の出生数は半分以下の86万4,000人です。1970年代前半と2019年を比較すると、出産可能な若い女性の人口が半分以下になっています。
2019年の出生数が少ないのは、1980年代、1990年代の少子化によるものです。1980年代、1990年代に生まれた女性が少なかったことで、2019年の少子化が引き起こされています。2019年に起きている少子化は、2039年から2059年あたりの少子化を引き起こす要因になります。
少子化は出産可能な若い女性の減少によるものですが、晩婚化、非婚化も少子化を加速させる要因になっています。
結婚する年齢が遅くなれば、妊娠可能な時期が短くなり、出生数の減少に繋がります。また、様々な理由で結婚しない人が増えていることも、出生数の減少に繋がります。
少子化が続く理由は、出産可能な若い女性が減少しているためです。出産可能な若い女性の人口を短期間で増やすことは難しく、少子化に歯止めを掛けることができません。
晩婚化、非婚化の改善は出生数の増加に効果がありますが、出産可能な若い女性の減少を補うことは困難です。
少子化は小売業にどのような影響を与えるか
少子化は人口の減少に繋がり、人が関わるものすべてが縮小して行くことになります。小売業においても、各店舗が縮小し、小売業全体が縮小すると予想されます。
少子化により人口が減少するため、小売業の店舗に関わる人も減少することになります。店舗で買い物をするお客さん、店舗で仕事をする従業員が減ります。
従業員の減少は多くの店舗で起きており、問題として認識されています。人手不足でアルバイト・パートの採用が難しく、時給の上昇は小売業の収益を圧迫します。
現在、若い世代のアルバイト・パートの採用が難しくなっている理由は、20~40年前の少子化に起因しています。また、2019年の少子化は、20~40年後に若い世代のアルバイト・パートの採用が難しい問題を引き起こします。
小売業では従業員の減少だけでなく、既存店の客数の減少も起こっています。
既存店の客数が減少する理由には、業種の垣根を超えた競争の激化、ECの拡大があり、少子化もその要因です。既存店の客数が減少する要因として、少子化を問題にする意見は少ないですが、少子化も確実に影響を与えています。
現在、少子化の影響が顕著に現れているのがコンビニの深夜の時間帯です。コンビニの深夜の時間帯はお客さん、従業員ともに少なく、人が不足しています。コンビニは24時間営業を続けることが難しくなり、見直しが必要な状況です。
今後、コンビニの深夜の時間帯のような人不足の状況が、小売業の多くの場面で見られるようになるのではないかと思います。
小売業は少子化にどのように対応すればよいか
少子化が続くことで、小売業ではお客さんと従業員の減少が続くことになります。小売業が少子化に対応するためには、少ないお客さんと従業員でも利益が確保できる、生産性の高い店舗運営を行うことです。
小売業では既存店の客数の減少が起こっており、少子化は要因の一つです。客数が減少するなかで売上を伸ばすには、お客さん一人あたりの売上を増やす必要があります。
今後、少子化により客数が大きく伸びることは期待しにくいため、お客さん一人一人を大切にして、長く買い物をしてもらうことが重要です。
少子化により人手不足の状況が起こり、アルバイト・パートの時給も上昇しています。人手不足、時給の上昇に対応するためには、より少ない従業員で店舗を運営できるように、省人化を進めなければなりません。
省人化のための施策として代表的なものは、セルフレジ・セミセルフレジです。セルフレジ・セミセルフレジは従業員の作業量を減らす効果があり、多くのスーパーマーケットで導入されています。
AI、ロボットなど、省人化のテクノロジーは次々に開発されており、小売業の店舗で検証され、導入が進んで行くことになります。
小売業の少子化への対応は、お客さん一人あたりの売上を伸ばしつつ、省人化を進めるというものです。売上を伸ばすことと省人化を比較すると、省人化の方が実現しやすく、生産性向上の確実な効果が見込めます。
このまま少子化が続いていけば、店舗の売上は減少することになります。しかし、店舗の売上が減少しても、省人化でコストを削減できれば、利益を確保するチャンスはあります。
それぞれの業種に少子化の難しさがある
少子化の歯止めがかからず、小売業は店舗で買い物するお客さん、店舗で仕事をする従業員が減ります。小売業は生産性の向上で少子化に対応したいですが、それぞれの業種に難しさがあります。
百貨店、総合スーパーは専門店の台頭、ECの拡大で売上が減少傾向にあります。これに少子化も加わることで、今後は状況が一層厳しくなります。
百貨店、総合スーパーは店舗面積が大きく、広い商圏から集客することを想定しています。少子化で人口が減ることになっても、店舗を小さくすることは簡単ではなく、生産性の向上を実現するのは困難です。
コンビニ、ドラッグストアは業界全体が堅調で、店舗数は増加傾向にあります。
コンビニ、ドラッグストアは店舗面積も小さいことから、生産性の向上に取り組みやすいと言えます。しかし、コンビニ、ドラッグストアは店舗数が多く、商圏が狭いことから、お客さん、従業員の奪い合いは非常に激しいです。
小売業は少子化に対応しなければなりませんが、店舗が大きければ大きいなりに、店舗が小さければ小さいなりに、異なる問題があります。
2019年の出生数は86万4,000人で、前年の91万8,400人から5.9%の減少でした。毎年このペースで出生数が減少すると、5年、10年ではまとまった数の人口が減少します。
店舗に関わる人間が減るというのは、小売業にとって避けられない事実です。店舗に関わる人間が減っても、利益を確保できるような店作りが必要になります。