5月20日、大戸屋は埼玉県、神奈川県、千葉県、東京都にある22店舗で、全8品の冷凍食品の販売を始めました。冷凍食品のラインナップには、店舗で提供されている定番商品だけでなく、冷凍食品のオリジナル商品もあります。
大戸屋が冷凍食品の販売を始めた理由は、中食需要の拡大が続いており、冷凍食品で売上を伸ばすためです。多くの飲食チェーンが冷凍食品の販売を強化しており、大戸屋の冷凍食品も業界全体の流れに沿うものです。
大戸屋は美味しい定食メニューを提供する飲食チェーンとしてよく知られています。将来的には知名度を活かし、ネット通販で売上を伸ばせそうです。
大戸屋が関東の22店舗で全8品の冷凍食品の販売を開始
5月20日、大戸屋は冷凍食品の販売を開始しました。
冷凍食品を販売するのは、埼玉県、神奈川県、千葉県、東京都にある22店舗で、商品のラインナップは全8品となっています。8品のうち6品はおかず、2品はおにぎりです。
6品のおかずは、「鶏と野菜の黒酢あん」、「豚と野菜の黒酢あん」、「さばの塩焼き」、「しまほっけの塩焼き」、「沖目鯛のゆう庵焼き」、「デミハンバーグ」です。
「鶏と野菜の黒酢あん」は店舗の定食メニューでは890円(税込)、冷凍食品では580円(税込)となっています。
「デミハンバーグ」は店舗の定食メニューにはなく、冷凍食品のオリジナル商品です。
冷凍食品の販売を記念して、おにぎり以外の6品は50円値引きされています。
大戸屋はなぜ冷凍食品を販売するのか
大戸屋は関東の22店舗において、全8品の冷凍食品の販売を始めました。
大戸屋が冷凍食品の販売を始めた理由は、中食需要の拡大が続いており、冷凍食品で売上を伸ばすためです。
近年、冷凍食品の市場規模拡大が続いています。
日本冷凍食品協会が発表している資料によると、2019年の1人あたりの冷凍食品消費量は23.4キログラムでした。10年前の2009年は18.5キログラムなので、10年間で約26%増加しています。
新型コロナウイルスの拡大により、生活様式が変わったことも冷凍食品には追い風です。混雑を避けるために店舗に買い物に行く回数が減る、テレワークで自宅で過ごす時間が増えるなどは、冷凍食品の売上増加に繋がります。
飲食チェーンが冷凍食品を販売することは一般的です。多くの飲食チェーンが以前より冷凍食品を販売しており、Amazon、楽天などのネット通販でも販売しています。
大戸屋の冷凍食品も、飲食チェーンが冷凍食品を強化する流れに沿うものです。ファミリーレストランのロイヤルホストも、2019年12月より冷凍食品の販売を始めました。
冷凍食品の市場規模の拡大は続いていますが、一方で、新規参入する飲食チェーン、小売チェーンも増えています。冷凍食品は有望なマーケットですが、競争が激しくなれば、売上を伸ばすことが難しくなるかもしれません。
大戸屋は冷凍食品の売上を伸ばせるか
大戸屋は冷凍食品の販売を開始し、売上の増加を目指します。
大戸屋は美味しい定食メニューを提供する飲食チェーンとして知られており、冷凍食品の販売で売上を伸ばせそうです。
大戸屋の冷凍食品を最初に買ってくれるのは既存顧客です。大戸屋の既存顧客は、大戸屋の美味しさをよく知っています。
大戸屋の既存顧客はほぼ確実に冷凍食品を買ってくれます。大戸屋は既存顧客に店舗で食事をしてもらうだけでなく、自宅でも冷凍食品を食べてもらうことで、既存顧客一人あたりの購入金額を伸ばすことができます。
冷凍食品のメリットは家族の分量を買ってもらえることです。店舗では一人で食事をするお客さんも、冷凍食品では家族複数人分を買うといったことが起こります。冷凍食品は長期間保存できるので、購入数量も多くなりがちです。
ネット通販は飲食チェーンの冷凍食品の重要な販路です。大戸屋は関東の22店舗で冷凍食品の販売を開始しましたが、将来的にはネット通販でも販売するはずです。
大戸屋に食事に行きたいが、店舗が近くにないという人は全国にいます。このようなお客さんに対して、大戸屋はネット通販で冷凍食品を販売できます。
大戸屋に行ったことのない人は、大戸屋は美味しい定食を提供する飲食チェーンという良いイメージを持っています。大戸屋の良いイメージは冷凍食品にも活かされ、食事のおかずとして競争力があります。
今後、大戸屋が冷凍食品の販路を全国の店舗、ネット通販と拡大して行けば、それに合わせて売上も増えるはずです。
業績不振の大戸屋が冷凍食品にかける期待は大きい
大戸屋を運営する大戸屋ホールディングスは、2020年3月期の決算では売上高が減り、営業損失になっています。
大戸屋ホールディングスが業績回復を目指すにあたって、新商品の冷凍食品にかける期待は大きいです。
大戸屋ホールディングスの過去5年間の業績は次のようになっています(売上高、営業利益・営業損失の単位は百万円)。
売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | |
---|---|---|---|
2016年3月期 | 26,012 | 600 | 2.3 |
2017年3月期 | 25,614 | 709 | 2.8 |
2018年3月期 | 26,265 | 634 | 2.4 |
2019年3月期 | 25,729 | 414 | 1.6 |
2020年3月期 | 24,579 | -648 | – |
2017年3月期から営業利益が減少し、2020年3月期には営業損失になりました。
大戸屋は値上げで客離れが起きたと評価されていますが、実際には大戸屋ホールディングスの営業利益率は低く、さらなる値上げが必要な状況です。
大戸屋は店内加工・調理を行い、美味しい定食メニューを提供することが強みです。しかし、店内の作業量が多いことは、時給の上昇の影響を受けやすい弱みにもなります。
大戸屋はさらなる値上げは難しく、人員の削減も難しいです。さらに、新型コロナウイルスの影響もあり、業績の回復には時間が掛かりそうです。
店舗の不調を補う新しい販路として、冷凍食品への期待は大きいです。冷凍食品は既存顧客への販売、ネット通販での販売で売上を伸ばせます。新型コロナウイルスで店舗はマイナスの影響を受けますが、冷凍食品には追い風です。