新型コロナウイルスの影響で店舗の労働環境が悪化、小売業は従業員に特別手当を支給

一部の小売業が従業員に特別手当を支給すると発表しています。特別手当を支給するのは、スーパーマーケット、ドラッグストア、ホームセンターなど、新型コロナウイルスの影響で店舗の労働環境が悪化している業種に多いです。

小売業が特別手当を支給する理由は、従業員を労い、体調の悪化、退職を防ぐためです。時給が安いアルバイト・パートは、労働環境も悪化しており、仕事を辞めても惜しいことはありません。

一部の小売業は従業員に特別手当を支給しますが、多くの小売業は支給しません。特別手当を支給しない小売業では、従業員のモチベーションの低下、退職の増加などのリスクが高まります。

小売業は従業員に特別手当を支給

小売業から従業員に特別手当(感謝金、慰労金、報奨金など)を支給した、または、支給する予定であるとの発表が多く出ています。

新型コロナウイルスの拡大により、食品、日用品を販売する小売業の店舗は、数カ月にわたり混雑する状況が続いています。店舗で働く従業員の労働環境は悪化しており、新型コロナウイルスに感染するリスクもあります。

小売業が支給する特別手当は、厳しい労働環境で仕事をする従業員を労うものです。

スーパーマーケットでは、ライフコーポレーション、イオン、西友、オーケー、エブリイ、コストコなどが特別手当の支給を発表しています。

ドラッグストアでは、ツルハホールディングス、スギホールディングス、カワチ薬品、ゲンキーなどが特別手当の支給を発表しています。

ホームセンターのコメリ、ジョイフル本田、家電量販店のエディオン、ディスカウントストアのミスターマックス・ホールディングスも特別手当の支給を発表しています。

新型コロナウイルスは収束に向かいつつありますが、依然として一部の店舗の混雑状況は続いており、従業員は厳しい労働環境で仕事をしています。

なぜ小売業は従業員に特別手当を支給を支給するのか

一部の小売業が従業員への特別手当の支給を発表しています。

小売業が特別手当を支給する理由は、従業員を労い、体調の悪化、退職を防ぐためです。

新型コロナウイルスの拡大により、店舗で働く従業員の労働環境は悪化しています。

食品、日用品を販売する店舗では、客数は数%程度減っているものの、客単価が10~20%程度高くなっています。お客さんは買い物の回数を減らしたいので、一度の買い物で購入する点数が増え、客単価が高くなります。

お客さんの購入点数が増えると、従業員が商品を補充する回数、レジで商品チェックをする回数が増えます。

レジで商品チェックをする回数が増えると、お客さん一人あたりのレジ時間が長くなり、レジが混雑します。レジに多くのお客さんが並ぶことは、レジの従業員にとって大きなストレスになります。

新型コロナウイルスの状況下では、食品、日用品の品切れが起こります。お客さんになぜ品切れなのかを何度も聞かれ、なかには怒り出すお客さんもいます。

近年、カスハラは問題だと認識され始めましたが、新型コロナウイルスにより、カスハラがさらに激化しています。

従業員には新型コロナウイルスに感染するリスクもあります。混雑する店舗は新型コロナウイルスに感染するリスクが高い三密です。従業員はもし自分が感染してしまうと、店舗、家族に迷惑が掛かるというストレスが大きいです。

安い時給で働くアルバイト・パートは、いつ仕事を辞めてもおかしくない状況です。時給が安いうえ、労働環境も悪化しており、仕事を辞めても惜しいことはありません。

小売業が特別手当を支給することは、従業員を大切にするという意志の表明です。時特別手当は従業員のモチベーションを高め、体調の悪化、退職を防止する効果があります。

特別手当を支給しない小売業には問題があるか

新型コロナウイルスの状況下において、従業員に特別手当を支給する小売業が出ていますが、多くの小売業は支給しません。

特別手当を支給しない小売業では、従業員のモチベーションの低下、退職の増加などのリスクが高まります。

小売業には様々な業種がありますが、同じ地域にある店舗であれば、アルバイト・パートの時給は横並びです。働く店舗によって、時給が100円も200円も違うといったことはありません。

特別手当を支給する小売業、支給しない小売業で対応が分かれました。特別手当を支給しない小売業で働いている従業員は、特別手当を支給する小売業で働いている従業員を羨ましく思い、不満を持ちます。

小売業の時給は横並びですが、資産、収益には差があります。特別手当を問題なく支給できる小売業もあれば、支給が難しい、または、できない小売業もあります。

これまで、小売業のアルバイト・パートは、どこで働いても時給はそれほど変わらないというのが一般的な認識でした。しかし、新型コロナウイルスの状況下では、アルバイト・パートであっても、待遇に差が生まれました。

特別手当を支給しない小売業で働いているアルバイト・パートの中には、特別手当を支給する小売業に移ろうと考える人も出てきます。

特別手当を支給しない小売業には、退職者が増加する可能性があります。特別手当を支給する余裕があり、客単価が伸びている小売業は、積極的に支給するべきです。

アルバイト・パートに依存する小売業のリスクが顕在化

小売業の店舗では、多くのアルバイト・パートが働いています。

新型コロナウイルスにより、小売業がアルバイト・パートに店舗運営を依存するリスクが顕在化しました。

小売業の基本業務は接客、補充、レジの三つです。接客、補充、レジを何度も繰り返すことで、売上が増えて行きます。小売業の店舗では、これらの業務の大部分をアルバイト・パートが担当しています。

小売業では業種にもよりますが、店舗で働いている従業員の6-8割ほどがアルバイト・パートです。接客、補充、レジの業務量が多い業種ほど、アルバイト・パートの割合が大きくなります。

新型コロナウイルスにより、小売業では店舗の労働環境が悪化し、アルバイト・パートの体調の悪化、退職のリスクが高まりました。

一部の小売業はアルバイト・パートの体調の悪化、退職を防止するため、特別手当を支給します。特別手当の支給がきっかけとなり、アルバイト・パートの待遇を改善する流れが加速することになります。

小売業が5,000人のアルバイト・パートに1万円の一時金を支給する場合、5,000万円掛かります。小売業が5,000人のアルバイト・パートの月給を1万円引き上げる場合、年間で6億円掛かります。

アルバイト・パートは月給が1万円上がると嬉しいですが、すごく嬉しいというほどではありません。月給1万円の上昇は、月に150時間働くアルバイト・パートの場合、時給にすると67円の上昇です。

小売業にとって年間6億円は大きな金額ですが、アルバイト・パートのモチベーションを上げる効果は限定的です。

新型コロナウイルスにより、小売業で働くアルバイト・パートの不満は高まり、待遇の改善を求めるようになります。しかし、小売業はアルバイト・パートの待遇を継続的に改善する資産、収益を持っていません。

もし、大量のアルバイト・パートが安い時給で働いてくれなくなれば、小売業は存続できなくなります。