1月20日、すかいらーくホールディングスは働き方改革の一環として、24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮を発表しています。24時間営業を廃止する店舗は約150店舗、深夜の営業時間の短縮を短縮するのは24時間営業を廃止する店舗を含め、グループの約560店舗です。
すかいらーくホールディングスが24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮を行う理由は、従業員の健康に配慮した職場環境を作るためです。
24時間営業を廃止することで、ランチ・ディナーの時間帯に人的資源を集中できます。24時間営業の廃止で深夜・早朝の売上が減少しますが、ランチ・ディナーの時間帯を強化することで、売上、利益の増加を狙います。
24時間営業の全店廃止・深夜の営業時間を短縮
1月20日、すかいらーくホールディングスは働き方改革の一環として、24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮を発表しています。
2020年1月から4月に掛けて、現在約150店舗ある24時間営業を全店廃止します。また、24時間営業を廃止する約150店舗を含め、グループの約560店舗(ガスト、ジョナサン、バーミヤン、グラッチェガーデンズ、夢庵)で深夜の営業時間を短縮します。
すかいらーくホールディングスが初めて24時間営業を開始したのは1972年でした。
近年は消費者のライフスタイルの変化、従業員の働き方の変化に合わせ、2012年に大規模な営業時間の見直しをが行われました。2017年には、従業員のワークライフバランスの推進を目的として、約600店の深夜営業時間が短縮されました。
今回発表された、24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮は、近年の24時間営業見直しの延長線上にあるものです。
すかいらーくホールディングスが24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮を行う理由は、従業員の健康に配慮した職場環境作りのためです。
24時間営業の全店廃止、深夜の営業時間の短縮後は、来店ニーズが高いランチやディナーの時間帯に人的資源を集中させる計画です。また、IT、デジタルの活用により、顧客満足度の向上を図ります。
2019年第3四半期末時点で、すかいらーくホールディングスの全店舗数は3,237店舗です。24時間営業の店舗数は約150店舗で、すかいらーくホールディングスの全店舗数に占める割合は約4.6%と小さいです。
なぜ24時間営業を廃止するのか
すかいらーくホールディングスは24時間営業を廃止する理由として、従業員の健康に配慮した職場環境作りを挙げています。また、理由として挙げられてはいませんが、深夜の時間帯の収益性の悪化もあるのではないかと思います。
24時間営業を廃止することで、従業員は働きやすくなります。
深夜・早朝に働かないことは、それだけで健康的です。昼と夜、労働時間が日によって変わることもなくなるため、仕事以外の生活も安定します。
飲食チェーン店では、ランチ・ディナーの時間帯にお客さんが集中します。店舗は慌ただしくなり、従業員の作業負荷が高まります。体力に自信のない従業員にとっては、ランチ・ディナーの時間帯は大変です。
24時間営業を廃止すれば、深夜・早朝に働いていた従業員をランチ・ディナーの時間帯に割り当てることができます。ランチ・ディナーの時間帯の従業員が増えれば、一人あたりの業務量が減るため、体力に自信のない従業員も仕事がしやすくなります。
24時間営業の廃止は労働環境の改善だけではなく、深夜・早朝の収益性の悪化とも関係があります。
深夜・早朝に来店するのは若い世代が多いですが、少子化で若い世代の人口は減少しています。また、若い世代はリアルで友人と会うのでなく、SNSで会話をするようになっています。すかいらーくホールディングスが24時間営業を開始した1972年と比べると、深夜・早朝の客数は減少していると考えられます。
客数の減少に加え、人手不足による時給の上昇も起こり、深夜・早朝で利益を確保することが難しくなっています。
24時間営業の廃止は売上・利益にどう影響するか
すかいらーくホールディングスの24時間営業の廃止が、売上・利益にどのように影響するかは気になるところです。
約150店舗が24時間営業を廃止するため、深夜・早朝の売上は減少します。一方、利益については、利益が出ている店舗、利益が出ていない店舗が混在していると考えられるため、増えるのか減るのかは分かりません。
24時間営業の廃止により、深夜・早朝に割り当てていた従業員をランチ・ディナーの時間帯に割り当てることができます。ランチ・ディナーの時間帯の従業員を増員することにより、売上をどれだけ増やせるかどうかが、24時間営業廃止の重要なポイントです。
従業員の増員により、ランチ・ディナーの時間帯の売上が伸びるというのは、十分に期待できることです。従業員が増えれば、接客が丁寧になる、料理の提供時間が短くなる、清掃に時間を掛けられるなど、店舗運営の質が向上します。
店舗運営の質が向上すれば、来店回数が増えたり、注文点数が増えます。
客数が少ない深夜・早朝で売上を伸ばすよりも、客数が多いランチ・ディナーの時間帯で売上を伸ばす方が効果的です。
24時間営業の廃止で深夜・早朝の売上が減少しても、ランチ・ディナーの時間帯で売上を増やせれば、全体の売上、利益を増やせる可能性があります。
すかいらーくホールディングスの24時間営業の廃止はネガティブなものではなく、ランチ・ディナーの時間帯を強化できるポジティブなものです。
24時間営業の廃止で利用者は困るか
すかいらーくホールディングスの24時間営業の廃止により、食事をする場所がなくなり、困る人が一定数出てくるかもしれません。
24時間営業の廃止でどれくらいの人が困るのかというのは不明です。深夜・早朝に食事をするニーズは縮小しており、代替となるコンビニも多数あることから、大きな問題ではないと思います。
深夜・早朝に食事をするニーズ深夜・早朝のニーズが縮小していることは確実です。
若い世代の人口は減少しており、深夜・早朝に活動する人口も減少しています。24時間営業の店舗は若者の憩いの場としても利用されてきましたが、現在ではSNSで会話するようになり、役割は小さくなっています。
深夜・早朝が仕事で、すかいらーくホールディングスの店舗がなくなると困るという人も一定数いるかもしれません。ただ、コンビニで食べ物を買う、自宅で食事をするなど、代替手段はあります。すかいらーくホールディングスの店舗の周辺は活動人口が多いはずで、近所にはコンビニもあるはずです。
ライフスタイルの変化、働き方の変化により、24時間営業のニーズは縮小していくと考えられます。すかいらーくホールディングスの24時間営業の廃止は、社会の変化に合わせたものであり、避けられないものです。
24時間営業の店舗は便利ですが、ずっと存在し続けるとは考えない方がよいです。
深夜・早朝よりもランチ・ディナーの時間帯にチャンス
すかいらーくホールディングスは24時間営業の廃止を発表しました。これは従業員の健康に配慮した職場環境作りを実現するとともに、ランチ・ディナーの時間帯に人的資源を集中させ、売上、利益を増やす戦略でもあります。
深夜・早朝とランチ・ディナーの時間帯を比較すると、ランチ・ディナーの時間帯の方が売上、利益を増やすチャンスが大きいのではないかと思います。
惣菜、冷凍食品などの中食市場が拡大しています。単身者の増加、働く女性の増加により、料理をしない人が増えているためです。料理をせずに食事をしたいニーズが高まっており、ランチ・ディナーの時間帯に売上、利益を増やすチャンスがあります。
飲食チェーン店では、店内で食事をするだけではなく、デリバリー、テイクアウトのニーズもあります。デリバリー、テイクアウトのお客さんが増えることは、店内で食事をするお客さんの増加にも繋がります。ロイヤルティの高いお客さんは、店内での食事、デリバリー、テイクアウト、すべてを利用します。
客数が少ない深夜・早朝を廃止して、客数が多いランチ・ディナーの時間帯に人的資源を集中することで、店舗の生産性が向上します。
従来の店舗運営では、ランチ・ディナーの時間帯と深夜・早朝それぞれに、優秀な人材が割り当てられていたと思います。深夜・早朝を廃止することで、ランチ・ディナーの時間帯に優秀な人材を集中できます。
深夜・早朝のニーズが縮小していくことを考えると、ランチ・ディナーの時間帯に人的資源を集中させ、売上、利益の増加を目指すのはよい戦略です。