ワタミは新型コロナウイルスの影響で業績が悪化、65店舗の閉店計画を発表

5月27日、ワタミは2020年4月以降、国内外食事業において、65店舗を閉店する計画を発表しました。新型コロナウイルスの影響により、国内外食事業の既存店売上高は3月、4月と大幅に減少しました。

ワタミが65店舗を閉店する理由は、新型コロナウイルスが収束した後も、店舗にお客さんが戻って来ない可能性があるからです。新型コロナウイルスによる、生活様式の変化は、ワタミの国内外食事業にとってマイナスなものです。

ワタミの宅食事業は安定に利益を稼いでおり、新型コロナウイルスの影響もそれほど受けていません。国内外食事業の先行きが不透明な中で、宅食事業の期待は大きいです。

業績の悪化と65店舗の閉店

5月27日、ワタミは2020年3月期の決算を発表しました。

ワタミの2020年3月期の売上高は90,928百万円(前期比3.9%減)、営業利益は92百万円(前期比91.3%減)、経常利益は349百万円(前期比71.5%減)、当期純損失は2,945百万円(前期は1,373百万円の当期純利益)でした。

営業利益、経常利益の減少は国内外食事業、海外外食事業の不調によるものです。当期純利益の減少は、店舗の減損損失19億円を含む、20億円の特別損失を計上したためです。

ワタミは2020年4月以降、国内外食事業において、65店舗の閉店を予定しています。2020年3月期末の国内外食事業の店舗数は491店舗(前期比11店舗増)なので、閉店予定の店舗数は全体の13%ほどです。

ワタミの2020年3月期のセグメント利益は次のようになっています(セグメント利益の単位は百万円)。

2019年3月期 2020年3月期 増減
国内外食 1,151 247 -904
宅食 2,150 2,234 +84
海外外食 161 ▲389 -550
環境 27 147 +120
農業 ▲187 ▲103 +84

国内外食事業の不調は新型コロナウイルスの影響、海外外食事業の不調は上海・深圳連結化、香港エリアを中心としたデモ活動の影響です。

新型コロナウイルスの影響により、国内外食事業の既存店売上高前年比は、3月が40.4%減、4月が92.5%減でした。2020年3月期において、新型コロナウイルスが影響を与えたのは3月の1ヶ月間だけですが、セグメント利益が大幅に減少しています。

宅食事業は新型コロナウイルスの影響は小さく、セグメント利益は増えています。

宅食事業のセグメント利益は大きいものの、国内外食事業がこれからどうなるのか不安があります。

なぜ65店舗を閉店するのか

ワタミは2020年4月以降、国内外食事業で65店舗を閉店する計画です。

ワタミが65店舗を閉店する理由は、新型コロナウイルスが収束した後も、店舗にお客さんが戻って来ない可能性があるからです。

過去5年間のワタミの国内外食事業の売上高、セグメント利益は次のようになっています(売上高、セグメント利益の単位は百万円)。

売上高 セグメント利益 利益率
2016年3月期 48,322 ▲1,535
2017年3月期 47,328 ▲229
2018年3月期 48,403 555 1.1
2019年3月期 47,781 1,151 2.4
2020年3月期 46,993 247 0.5

近年、ワタミの国内外食事業は売上高は伸びていませんが、収益性が改善され、セグメント利益は増加傾向にありました。2020年3月期も2月までは順調だったものの、新型コロナウイルスの影響により、セグメント利益は大きく減少しました。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、生活様式が変わりました。生活様式の変化はワタミにとってマイナスのものが多いです。新型コロナウイルスが収束した後、ワタミの国内外食事業が以前のように戻るかどうかは分かりません。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、三密を避ける生活様式が普及しました。新型コロナウイルスが収束した後も、三密を避ける生活様式は定着しそうです。

ワタミの店舗は三密にあたるため、客離れが起こる可能性は高いです。

リモートワークの普及もワタミにとってはマイナスです。オフィスで仕事をする機会が増えれば、仕事帰りにワタミで食事をしたり、宴会をする機会も減ります。また、オンラインでお酒を飲む「オン飲み」も登場しています。

さらに、飲食店では新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として、客席を減らすことが求められます。客席を減らすことは、確実に売上の減少に繋がります。

ワタミは2020年4月以降、国内外食事業で65店舗を閉店する計画ですが、閉店しない店舗も先行きは不透明です。

宅食事業は安定的に利益を稼ぎ続けられるか

ワタミの宅食事業は安定的に利益を稼いでいます。

宅食事業は新型コロナウイルスの影響が小さく、今後も安定的に利益を稼ぎ続ける可能性が高いです。

国内外食事業は新型コロナウイルスの影響を受け、セグメント利益は大きく減少しました。一方、宅食事業は新型コロナウイルスの影響をそれほど受けておらず、セグメント利益は増えています。

過去5年間のワタミの宅食事業の売上高、セグメント利益は次のようになっています(売上高、セグメント利益の単位は百万円)。

売上高 セグメント利益 利益率
2016年3月期 37,585 2,072 5.5
2017年3月期 37,501 2,414 6.4
2018年3月期 38,006 1,983 5.2
2019年3月期 36,718 2,150 5.9
2020年3月期 34,462 2,234 6.5

宅食事業の売上高は減少傾向にありますが、セグメント利益は安定的に2,000百万円前後を稼いでいます。宅食事業は国内外食事業よりもセグメント利益が大きく、ワタミの中心事業です。

ワタミは宅食事業を拡大するにあたって、国内外食事業で培った知名度を活用することができます。ワタミの店舗で食事をしたことがあるお客さんは、将来、ワタミの宅食も利用してくれます。

ワタミは農業事業において、有機農産物の生産、酪農畜産、乳加工品製造を行っています。自社で食材を生産・加工していることは、安全性、収益性で強みになります。

ワタミの国内外食事業は新型コロナウイルスの影響が大きく、先行きが不透明です。安定的に利益を稼いでいる、宅食事業への期待は大きいです。

新型コロナウイルスは居酒屋に大打撃

飲食店は新型コロナウイルスが収束した後、以前のようにお客さんが戻ってくるかどうかを心配しています。

飲食店のなかでも、居酒屋は新型コロナウイルスの影響が大きく、大打撃を受けることは避けられません。

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、生活様式が変わり、外食離れ、テレワーク、客席の減少が起こります。外食離れ、テレワーク、客席の減少の影響をどれくらい受けるかは、飲食店のジャンルによって異なります。

居酒屋は外食離れ、テレワーク、客席の減少の影響が最も大きいジャンルの一つです。さらに、居酒屋には「オン飲み」の影響もあります。

外食離れ、テレワーク、客席の減少は、単体でも客数の減少を引き起こしますが、セットになると、大幅な客数の減少を引き起こします。

飲食店は店舗の売上の減少をテイクアウト、デリバリーで補おうとしています。しかし、店舗の売上は大きく、テイクアウト、デリバリーで補うことはできません。

居酒屋は他のジャンルと比較して、テイクアウト、デリバリーの売上を伸ばすことが難しいです。テイクアウト、デリバリーではお酒が売れにくく、店舗のように注文点数の増加も期待できません。

新型コロナウイルスによる、生活様式の変化に対して、今のところ有効な手立てはありません。5月25日の緊急事態宣言の解除後、居酒屋を含め、飲食店は徐々に再開していますが、どれくらいお客さんが戻るのかは不安です。