Zホールディングスが新たなコマース戦略を発表、三つのサービスで事業を拡大

3月24日、Zホールディングスは物流・配送の強化に向けた、新たなコマース戦略を発表しました。

新たなコマース戦略の内容は、ヤマトホールディングスと提携して行う新物流サービスの提供、PayPayモールと実店舗の在庫連携機能の提供、Yahoo! JAPANのショッピングシステム「XS(クロスショッピング)エンジン」の提供の三つです。

新物流サービス、PayPayモールと実店舗の在庫連携機能には、出店者の売上を増やす効果が期待でき、コマース事業の拡大に貢献しそうです。

Zホールディングスのコマース戦略の詳細

3月24日、Zホールディングスは物流・配送の強化に向けた、新たなコマース戦略を発表しました。Zホールディングスのコマース戦略は三つの新サービスから成ります。

Zホールディングスの新サービスは、ヤマトホールディングスと提携して行う新物流サービスの提供、PayPayモールと実店舗の在庫連携機能の提供、Yahoo! JAPANのショッピングシステム「XS(クロスショッピング)エンジン」の提供の三つです。

新物流サービスはPayPayモールとYahoo!ショッピングの出店者に対するものです。出店者の受注から出荷までの業務について、業務の一部、または全部をヤマトホールディングスが代行します。

ヤマトホールディングスが一部代行するサービスは「ピック&デリバリーサービス」、すべて代行するサービスは「フルフィルメントサービス」です。「フルフィルメントサービス」では、出店者の在庫をヤマトホールディングスの物流拠点に保管します。

「ピック&デリバリーサービス」と「フルフィルメントサービス」は、2020年6月30日より提供を開始する予定です。

PayPayモールと実店舗の在庫連携機能は、PayPayモール出店者の実店舗とオンラインの在庫情報を連携させるものです。2020年3月10日より、「ヤマダ電機 PayPayモール店」など一部の店舗にて、実店舗の在庫の有無を表示する取り組みを開始しています。

2020年秋頃にはPayPayモールで実店舗に在庫している商品を購入し、実店舗で受け取ることができる予定です。

「XSエンジン」とは、PayPayモールやYahoo!ショッピングで利用している、検索や決済などを含む、一連のシステムのことです。PayPayモールと実店舗の在庫連携機能も、「XSエンジン」に実装される予定です。

Zホールディングスは「XSエンジン」を外部に開放し、自社ECサイトを構築したい事業者に提供します。今後、アスクルが運営する個人向け通販サイト「LOHACO」に「XSエンジン」を導入する予定になっています。

新物流サービスの「ピック&デリバリーサービス」、「フルフィルメントサービス」と「XSエンジン」を組み合わせ、ECサイトの運営から配送までのサービスをワンストップで提供することも計画されています。

「Xエンジン」のサービス提供の時期は発表されていません。

Zホールディングスの新たなコマース戦略には、ECの運営を総合的に強化するサービスが盛り込まれています。

新物流サービスはコマース事業の拡大に貢献するか

Zホールディングスがヤマトホールディングスと提携して提供する新物流サービスは、出店者の出荷業務を代行するものです。

新物流サービスは出店者の出荷業務の負担軽減、お客さんの買い物体験を改善する効果があり、コマース事業の拡大に貢献します。

出荷業務の負担軽減は出店者の売上の増加に繋がります。

売上の増加にあわせて出荷業務も増え、従業員の負担は増加します。出荷は重要な業務ではあるものの、出荷業務に時間を取られるのは好ましくありません。出荷業務の負担が重くなった店舗は、物流企業に出荷業務を委託します。

物流企業に出荷業務を委託することで、他の業務に割り当てる余力が生まれます。新商品の仕入れ、商品ページの作成など、売上に繋がる業務に注力すれば、売上を増やせる可能性があります。

買い物体験の改善は出店者の売上の増加に繋がります。

ヤマトホールディングスに在庫を預ける「フルフィルメントサービス」では、受注から出荷までのリードタイムが短縮され、お客さんは早く商品を受け取ることができます。また、お客さんはクロネコメンバーズの便利なサービスを利用できます。

買い物体験の改善は店舗のイメージアップになり、リピーターになってもらえるチャンスが増えます。優れた買い物体験でリピーターを増やせば、売上も増えます。

ヤマトホールディングスはECの宅配でノウハウを持つ大手企業なので、新物流サービスへの期待は大きいです。

実店舗の在庫連携機能はコマース事業の拡大に貢献するか

PayPayモールと実店舗の在庫連携機能は、PayPayモール出店者の実店舗とオンラインの在庫情報を連携させるものです。

実店舗とオンラインの在庫情報の連携には出店者の売上を増やす効果があり、コマース事業の拡大に貢献します。

実店舗の在庫をオンラインで売ることで売上が増えます。

オンラインの在庫はないが、実店舗の在庫はあるといったケースが発生します。実店舗の在庫をオンラインで売れば売上になるのですが、そのような仕組みがない場合、売上を逃してしまう機会損失になります。

PayPayモールと実店舗の在庫連携機能は、このような機会損失を解消するためのものです。在庫連携機能を活用して、実店舗の在庫をオンラインで適切に販売できれば、出店者の売上は増えます。

PayPayモールから実店舗へお客さんを誘導することで売上が増えます。

「ヤマダ電機 PayPayモール店」では、実店舗の在庫の有無を表示しています。「ヤマダ電機 PayPayモール店」で商品に興味を持ったお客さんは、実店舗に在庫があれば買い物に出掛け、購入する可能性があります。

オンラインに実店舗の在庫の有無を表示することは、お客さんが実店舗へ買い物に出掛けるモチベーションになります。オンラインに在庫の有無を表示するだけで実店舗の集客力が高まるため、シンプルでありながら効果的です。

PayPayモールと実店舗の在庫連携機能には、出店者の売上を増やす効果があり、Zホールディングスにとって重要なサービスになりそうです。

自社EC構築システム提供はコマース事業の拡大に貢献するか

「XSエンジン」は企業が自社ECを構築するのを支援するものですが、サービス提供の時期は発表されていません。

新物流サービス、在庫連携機能と比べて類似事例がなく、コマース事業の拡大に貢献するかどうかは分かりません。

自社ECには集客が難しい問題があります。

「XSエンジン」はPayPayモール、Yahoo!ショッピングの機能を持つ高機能なシステムですが、やはり集客の問題はあるはずです。「XSエンジン」を活用しても、集客がうまく行かなければ売上は増えません。

「XSエンジン」で自社ECを構築すれば、お客さんとのタッチポイントが増えるため、商品が売れるチャンスも増えます。「XSエンジン」の最初の導入はアスクルが運営する個人向け通販サイト「LOHACO」となっており、ある程度集客力のある企業の利用を想定しているのかもしれません。

ECのワンストップサービスには将来性があります。

「XSエンジン」は新物流サービスと連携し、在庫連携機能も実装される計画です。「XSエンジン」で自社ECを構築する企業は、システムの開発・保守、物流について、自社で経営資源を持つ必要がなくなります。

「XSエンジン」で自社EC運営のハードルが下がれば、ECに参入する企業が増えます。「XSエンジン」はZホールディングスのコマース事業を拡大するというよりは、EC業界全体を拡大するものだと言えます。

新物流サービス、在庫連携機能には売上を増やす効果が期待できますが、「XSエンジン」は先が長いサービスです。

新たなコマース戦略でPayPayの買い物体験改善に期待

Zホールディングスの新たなコマース戦略により、PayPayモールには出荷業務代行機能、実店舗の在庫連携機能が追加されます。

PayPayモールは新たな機能の追加で買い物体験が改善され、さらに優れたECモールへと発展します。

PayPayモールの魅力は、PayPayのポイントと有名な小売業の出店です。

PayPayは多くの小売チェーン、飲食チェーンに導入され、還元率の高いポイントキャンペーンも行われています。PayPayの利用者はスマホ決済の利用で貯めたポイントを使い、PayPayモールでお得な買い物ができます。

PayPayには有名な小売業が多数出店しており、お客さんはよく知っている店舗の商品を安心して買うことができます。有名な小売業の商品をポイントを使ってお得に買えるので、お客さんの満足度は高いです。

新たな機能の追加でPayPayモールのお客さんの満足度はさらに高まります。

これまで有名な小売業の商品をポイントを使ってお得に買い物をしていたところに、出荷業務の代行で商品の受け取りが早くなります。また、実店舗の在庫連携機能により、商品を実店舗で確認してから買うこともできます。

既存の魅力に新しい魅力が加わることで、PayPayモールでの買い物がさらに楽しいものになります。今後も新しい魅力を追加していけば、既存の魅力と組み合わさることで、お客さんの満足度を高めることができます。

PayPayモールはお客さんが求める買い物体験を取り入れており、今後も買い物体験の改善が期待できます。